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ミクロ経済学の最頻出分野「余剰分析」の解説を、本試験二ヶ月前に出血大サービスで読者にお送りします。


余剰分析

 図1の各単位の棒グラフは、消費者のある財の需要価格である。消費者が支払ってもよい価格、すなわち消費者の評価額である。ここでは、各消費者が1単位のみ消費するものとする。たとえば、最初の1単位は、鈴木さんが、この財に80円まで支払ってもよいとする。つまり、鈴木さんのこの財への評価額は、80円である。次に、2単位目は、佐々木さんが、70円まで支払ってもよいとし、評価額は70円である。以下同様に、3単位目は、小林さんの評価額が60円、4単位目は、松井さんの評価額が50円となる。これらの棒グラフを曲線でつなげたのが、需要曲線である。

 図1は、太線で、限界費用曲線MCが、描かれている。図1では、1単位目の限界費用(MC)が20円、2単位目のMCが30円、3単位目のMCが35円などとなっている。   さて、各単位の消費者の評価額と限界費用MCの差を、限界余剰という。これは、1単位あたりの余剰を意味する。これは、当然プラスの場合のみ、経済厚生に寄与する。図2では、4単位目まで限界余剰はプラスであり、斜線で示されている。限界余剰の総和が、(総)余剰である。この余剰が最大となるのは、図2では4単位目までの生産である。この最大余剰は、図2の斜線部の総面積で示される。このとき、生産は経済厚生上最適であり、最適資源配分効率が達成されているという。5単位目以降は、限界余剰がマイナスであり、5単位目以降は、生産を増やすほど、余剰は減少していく。それゆえ、5単位目以降は、経済厚生上生産すべきではない。

 さて、図2の4単位目の生産のように、最大余剰が達成されるのは、完全競争市場のみである。完全競争市場では、需要曲線と供給曲線の交点で、通常は生産が決定される。そして、供給曲線は、各企業のMC曲線を水平に集計したものであり、MC線といえる。したがって、完全競争市場では、市場価格=限界費用で生産が決定され、最大余剰が達成され、最適資源配分効率となっている。

 さて、余剰は、消費者余剰と生産者余剰に分けることができる。

 図3は、完全競争市場であり、価格はP*、供給量はx*に決定される。消費者余剰は、消費者の財への評価と実際に支払った価格との差額であり、図3では三角形P*abで示される(図3、図4は、需要曲線と限界費用曲線を直線か曲線で示している)。生産者余剰は、生産者の収入から費用を引いたものであり、図3では三角形P*beとなる。ただし、図3のS線は、限界費用曲線であり、生産者余剰を導く際に、固定費用はゼロと仮定している。したがって、消費者余剰と生産者余剰の合計である三角形abeが、(総)余剰となる。

 図4は、独占市場を示している。MR=MCにより、価格はP*、生産量はx*に決定される。この場合、消費者の評価と実際に支払う価格との差である消費者余剰は、三角形P*abである。生産者の収入から費用を引いた生産者余剰は、四角形P*bceとなる。それゆえ、(総)余剰は、双方の合計であり、四角形abceとなる。

 図3の完全競争市場は、既述のとおり、最大余剰が達成されるが、図4の独占市場では最大余剰は達成されない。なぜなら、図4のx**までは、限界余剰がプラスであり、x**で最大余剰となる。MR=MCによるx*の生産では、斜線部の三角形bcfの面積の余剰が達成されないのである。それゆえ、この三角形bcfを、独占の厚生損失という。

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