インフォーメーション・サービス32
論文の書き方
1 時間配分
資料集め(トピックの選択、文献・資料探し、資料研究)・・・時間の約三分の二
論文書き(下書き、書き直し、総点検、)・・・・・・・時間の約三分の一
2 論文のトピック(テーマ)
論文のトピックとなる問題は、一定の答えを要求するような問いでなければならない。
例 「公正取引委員会のカルテルの防止策は十分なものか」
「再販売価格維持制度の適用除外は、必要か」
3 トピック確定の条件
(1) トピックの研究に必要な資料があるか。
(2) 自分の力で扱いきれるか。
(3) 新しい研究トピックであるか。
(4) トピックに自ら興味、感心があるか。
(5) 資料の調査・研究が終了するまでにトピックの変更の可能性もある。
4 資料探し
(1) 仮読み
資料探しをしながら軽く速く、大雑把に資料に目を通す。
(2) 本読み
最終的に使用すると決めた資料は、研究カードをとりながら精密に読む。研究カードは、研究資料から得た情報を、一項目ずつ一枚の研究カードに記入する(ル−スリ−フのノートでもよい)。カードの左上に項目の見出しを付ける。研究カードには、研究資料の要約、引用、自らのコメントなどを記入する。また、その資料の出典(詳細は文献カードに記載されているので、著者と出版年だけのように簡略化されたものでよい)、その箇所のページ数も記入しておかなければならない。
5 文献カードの作成
研究の作成からいままでお世話になった参考資料、研究資料のすべてを、文献カードに一枚一点ずつ記録する仕事である。
(1)文献カードの記入事項
a.著者 b.書物のタイトル c.出版地・出版社・出版年 d.使っている図書館の請求番号 e.簡単な書評・コメント f.使用記録
(2)文献カードを作る理由
a.論文を仕上げた後、使用した文献表を作らなければならない。
b.一度使った資料を、後にもう一度検証したいときに、その所在を明らかにしてくれる。
6 書く
(1) 論文にとり大切なのは、論文全体がやさしく、分かりやすく書けていることである。つまり、構造的に組み立てられていることである。構造的に組み立てられているということは、主要トピックとそれに関連した副トピックを手がかりに話を進めていくということである。細かい副トピックに、ひとつひとつ答えていくうちに、主問への答えが自然に出てくるというように構成された論文が、構造的に展開された論文である。
(2) つまり、様々な役割と格をもった文、段落、章が、有機的につながり、一つの構造を作り上げていれば、明快な分かりやすい論文、書物になる。
7 注・文献表
(1) 注
注は、論文のなかの説明や主張が、どういう資料的裏付けをもっているかを示すものである。また、誰にでも自分の説明や主張の根拠を、検証して貰うための手段でもある。「証拠固めのできた論文」とは、注や文献表がよく整備された論文のことであるといえる。
注には、次の3種類がある。
a.資料(図表、統計も含む)からの直接引用の出典を示すもの
引用は、100字位にし、本文のなかにスムースに入るようなものにする。
b.資料からの要約の出典を示すもの
c.本文に入れると叙述の流れを妨げるが、本文の理解に役立つ補足情報ないしコメント
注には、煩雑を避けるため、同一出典の繰り返しは、次のように略記を使う。
(2) 文献表
卒業論文のようなある程度の量の論文には、文献表を付ける。文献表は、注に出てくるすべての文献を入れ、著者の姓名のアルファベット順でまとめる。著者のない新聞、雑誌、辞典は、各種類別に分け、アルファベット順に配列する。
文献表は、資料集め、資料研究の過程で文献カードを作ってあれば、原稿に書き写すだけである。
8 総点検
清書をする前に、少なくとも、下書きの段階で、一、二回全体を読み直す必要がある。要するに、論文全体が、明瞭で、正確で、無駄なく整理され、淀みなく流れるように書かれているかが大事な点である。
9 完成した論文
(1) 表題
表題は、下書きが終わって全体を読み直してから、最初のままでよいか,別のものでよいか、よく考えた上で最終的に決定する。
(2) はしがき
ここでは、論文を書くきっかけ、この論文はなにを扱っているのかを書く。お世話になった方や協力してくれた方への謝辞も、ここに入れる。
終わりに著者の名と執筆年月を記す。
(3) 目次
目次は、はしがきから索引までの内容を、一目でわかるように表示したものである。目次の終わるところまでは、i,ii,iiiというローマ字にする。アラビア数字でページが始まるのは、「序」からである。
(4) 序
ここから、正式に論文が始まる。これを第一章とする人もいるが、「序」の目的は同じである。
序は、論文の目的、範囲,意義、研究の手順などを紹介する。研究の手順とは、それぞれの章で、どういうふうに手続き,話を進めていくかということである。こうすると、各章のつながり、意義が明瞭となる。
また、序で答えを出してしまってはいけない。答えは、研究の結果、最後に出てくるはずのものである。最終的な答えが、初めから説明されていては、論文の盛り上がりに欠けることになる。
(5) 本体
論文の本体は、必要に応じて、3章にも5章にもなる。各章のはじめでは、章の目的、問いが何であるかを示す。そして、各章の終わりでは、その問いの答えがどうなったかが分かるようにする。
(6) 結論
これは、各章の答えを総合的にまとめ、序で示された問いに答えを出す場所である。それゆえ、序と結論が、呼吸があっていなくてはならない。
また、ここで新しいトピックについて、新しい議論を進めることは厳禁です。
(スペース配分は、「序文」に5%、「本体」に約85%、「結論」に10%というのが、大まかな目安である)
参考文献
沢田昭夫「論文の書き方」講談社 1977年
沢田昭夫「論文のレトリック」講談社 1983年
木下是雄「レポートの組み立て方」筑摩書房 1983年
例 注
(1)伊藤元重 「ミクロ経済学」 日本評論者 1998年 8頁
(2)同上、86頁
(3)原山広之 「経済原論」 コーナンソフト 2000年 35頁
(4)伊藤、前掲書、156頁
(5)同上、98頁