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2002年下半期 世界経済10大トピック

2002年下半期の世界経済のトピックで、特に重要なものを10件ピックアップしました。これは、週間トピックからの抜粋です。


(1) 台頭する産油国ロシア(2002/7/4) ***

 世界のエネルギー地図が、大きく変わっている。ロシアは、今年サウジアラビアを抜き世界第二位の産油国に浮上する見通しである。一方、中国もエネルギー消費大国としての存在感を急速に増している。1973年の第一次石油危機から30年が経ち、需給構造の変化は、企業の行動を変え、国際関係も動かそうとしている。


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(2)BIS年次報告−邦銀・生保「持ち合いでリスク増大」(2002/7/8) ***

 国際決済銀行(BIS)は,8日加盟する世界50あまりの中央銀行総裁を集め総会を開き、世界経済の現状を分析した年次報告を公表した。そのなかで、日本の金融システムに言及し、銀行と生命保険会社の間の資本持ち合いが、危機の連鎖リスクを増大させていると警告した。銀行が生保発行の劣後債を持つ一方で、大半の銀行が上位五株主のうち、二つ以上が生保になっている。銀行株下落による巨額の損失発生が、日本の生保を弱体化させていると指摘している。加えて、資本持ち合いが、生保による銀行へのチェック機能を弱めている点も重視している。これが、日本の企業統治(コーポレートガバナンス)を弱め、構造改革を遅らせる要因にもなっているとしている。

 さらに、日本の銀行の多額の株式保有自体も国際標準から異常であり、株価下落により銀行の低い収益性の一因にもなっているとしている。  

注:劣後債・・・返済順位が通常の債務に劣後する債権である。自己資本的な性質をもつため、BIS基準の自己資本に一定の制約の下で参入できる。一般に、通常の債権より利回りは高くなる。


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(3) アメリカ景気は減速(2002/9/12) ***

 アメリカ連邦準備理事会(FRB)は、11日発表した「地区連銀経済報告」で、過去数週間に経済成長が減速したとの認識を示した。7〜8月にかけ不安定な株価の動きや設備投資の回復の遅れを受け、景気判断を後退させた。業種別では、製造業は、自動車など一部を除いて、全体的に停滞した。ハイテクや建設資材の弱さを示す報告も目立った。FRBは、8月に当面の政策運営方針を中立型から景気配慮型に変更している。


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(4)時価総額1500兆円目減り(2002/9/25) ***

 日米欧アジアの主要9株式市場の時価総額は、2年半前のピーク時に比べ12兆ドル強(1500兆円)減少した。これは、2001年の世界の国内総生産(GDP)の31兆ドル強の4割に匹敵する。ハイテク企業の業績不安が再燃しているのが主因である。株価急落が企業の資金調達難を招くなど、株安と実体経済の悪化が連鎖的に進む懸念も生じてきた。


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(5)2004年のEU加盟10カ国(2002/10/5) ***

 EUの執行機関である欧州委員会は、2004年にポーランドやハンガリーなど中・東欧などの10カ国の新規加盟を勧告する方針を決定した。24日からのEU首脳会議で承認される見通しである。これにより、EUは、東西欧州を統合し、地域の安定を強化するとともに、アメリカと肩を並べる経済共同体への発展を目指す。この拡大後は、加盟国が現在の15から25へ増加し、人口は2割増の約4億5千万人、域内総生産は4千億ドル増の8兆2千億ドル(2000年時点の合計)とアメリカの経済規模(9兆9千億ドル)に一歩近づく。

[2004年加盟予定の10カ国]   ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、リトアニア、ラトビア   エストニア、スロベニア、キプロス、マルタ


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(6)仏財政政策にユーロ圏動揺(2002/10/13) **

 赤字削減より景気を優先するフランスの財政政策が、ユーロ圏で波紋を広げている。12ヶ国で唯一、2003年から毎年財政赤字の対GDP比を0.5%ずつ減らす財政赤字削減計画に反対している。フランス政府は、財政赤字を3%以内に抑えるが、財政均衡への赤字削減速度は遅らせるという方針である。EUは、財政均衡の目標年次を設定できずにいる。財政赤字を削減する共通目標からの逸脱を許せば、インフレ期待を醸成して通貨ユーロの信任が低下しかねない。


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(7)対米貿易黒字、中国今年も最大(2002/10/22) **

 中国が、3年連続対米貿易黒字国となる公算が強くなってきた。今年8月までに、既に第二位の日本の1.4倍の633億ドルとなっている。アメリカへの最大貿易黒字国は、長く日本が一位であったが、2000年から中国がトップとなっている。中国のアメリカ向け輸出品は、電気製品や産業機械など付加価値が高い製品にシフトしつつあり、アメリカにとって中国経済の存在感は一段と高くなっている。


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(8)中国の海外からの直接投資額、アメリカを抜きトップ(2002/10/25) ***

 国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2002年の海外からの中国向け直接投資額が、アメリカを抜いて世界一になる見通しである。国際的な合併・買収(M&A)の激減により、アメリカを初めとして投資は減少し、世界全体では27%減少したが、中国は独り勝ちの様相である。今年は、500億ドルに届くと予想される。経済自由化と産業再編成が投資流入を促進し、WTO加盟がそれを加速した。世界的な直接投資の減少は、世界的景気減速に加え、不正会計などの不祥事のためといえる特に、アメリカは、2001年の1240億ドルから、2002年は440億ドルへと落ち込むと予想される。


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(9)ドイツの財政赤字比率3%超予測、EU改善要求へ(2002/11/14) ***

 欧州連合(EU)の欧州委員会は、ドイツの2002年の財政赤字の対GDP比が3.8%となり、ユーロ参加国の上限基準である3%を突破するとの見通しをまとめ、EUの赤字是正手続き(事実上の監視下となる)を発動すると発表した。フランスは3%近くに達すると見られ、フランスにも警告発動手続きに入る。ユーロ参加国は、ユーロ導入に際し結んだ「安定・成長協定」により、毎年の財政赤字をGDP比で3%以内に抑える必要がある。上限を超えると、EUは是正手続きを発動し、赤字削減策の提示を求める。それでも違反状態が続けば、最大でGDPの0.5%に相当する罰金が検討される。

[欧州委のユーロ圏経済予測](2002年,%)
GDP伸び率 0.8
失業率 8.2
消費者物価上昇率 2.3
財政赤字のGDP比 2.3
同上・ドイツ 3.8
同上・フランス 2.7


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(10)アメリカ失業率悪化6%に(2002/12/7) ***

 アメリカの雇用情勢が悪化してきた。アメリカ労働省によると、11月の失業率(軍人を除く)が警戒水域の6.0%となり、前月より0.3%の上昇であった。7ヶ月ぶりに6%台に乗せた。非農業部門の雇用者数も4万人減少しており、雇用問題が近く発足するブッシュ政権の新経済政策チームの最大の課題になる。イラク情勢が不透明ななかで、企業は新たな設備投資や新規雇用に消極的なままである。このような情勢も、製造業を中心とするリストラの厳しさの一因となっている。


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