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2003年上半期 日本経済10大トピック

2003年上半期の日本経済のトピックで、特に重要なものを10件ピックアップしました。これは、週間トピックからの抜粋です。


(1) 失業率最悪、2002年5.4%(2003/1/31) ***

 総務省によると、昨年12月の完全失業率は、5.5%と前月より0.2%上昇し、過去最悪の水準に並んだ。2002年の平均も5.4%と過去最悪である。倒産や解雇などによる失業が、依然高水準であった。また、2002年の有効求人倍率は、0.54倍と前年比0.05倍低下した。雇用悪化で、家計(勤労者世帯)の消費支出も、昨年の平均で前年比0.2%減となった。消費者物価も、昨年の平均で前年比0.9%減であり、デフレが続いている。


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(2) 賃金昨年平均2.3%減と最大の減少(2003/2/3) ***

 厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2002年平均の月間現金給与総額は、34万3688円と前年比2.3%減(実質1.2%減)となり、調査開始以来最大の減少となった。デフレによる企業のコスト削減により、賃金低下に歯止めがかからず、個人の所得環境が急速に悪化しているといえる。内訳をみると、所定内給与が1.2%減と過去最大の減少率であり、パート社員が増えたのが主な要因である。所定外給与は、年前半の生産回復による残業時間の増大で0.8%減に留まったが、ボーナスなどの特別給与は7.2%減と最大の落ち込みとなった。

 また、パートを含めた2002年の常用雇用の労働者の一人当たり年間実労働時間(平均)は、1825時間と前年比11時間減であった。


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(3)国民負担率36.1%(2003/2/7) **

 財務省によると、2003年度の国民所得に占める税金や社会保険料の負担割合が、前年度比0.6%低下して、36.1%になるとの試算である。総額1兆8千億円の先行減税などの影響で、租税負担が低下するのが主因である。内訳をみると、租税負担率が、減税や景気低迷により20.9%と前年度比0.8%低下し、先進国中で最低水準となる。一方、少子高齢化のどの影響で、現役世代の負担が増し、医療、介護、年金などの社会保障負担率は15.2%と前年度比0.2%増と3年連続増加となった。

 また、国民が将来負担せざるをえない来年度の財政赤字を含めた潜在的な国民負担率は、47.1%で、0.1%低下するが、かなりの高水準である。


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(4)経常収支黒字4年ぶり拡大(2003/2/10) ***

 財務省による2002年の国際収支速報では、中国などアジアを中心に輸出が好調で、貿易黒字は前年比37.5%増となった。現行統計となった85年以降、最大の伸びである。そのため、経常収支黒字も33.8%増と4年ぶりに増加した。

2002年の貿易黒字は、11兆7280億円で、輸出は自動車、鉄鋼などが、アジアやアメリカ向けに伸びた。配当など対外資産からの収益である所得収支の黒字は、1.4%減の8兆2784億円であった。2001年は、所得収支の黒字が貿易収支黒字に迫る勢いであったが、2002年は再び対外資産への投資よりも貿易に頼る日本経済の体質が出てきたといえる。サービス収支は、航空輸送が好調で赤字幅が縮小し、5兆1627億円の赤字であった。その結果、経常収支黒字は、14兆2484億円となった。


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(5)日銀の速水総裁「ゼロ金利解除」誤りでしたー最後の講演で(2003/2/26) ***

 日本銀行の速水総裁は、総裁として最後の講演を行い、「需要を刺激し経済を持ち上げる効果は、残念ながら限定的であった」と力不足を認めた。2000年8月に政府の反対を押し切り、ゼロ金利政策を解除して、金利の誘導水準を引き上げた理由については、「IT製品の在庫が過剰であったのが分からなかった」と、判断の誤りを認めた。このほか、景気回復のための円安誘導に関しては、「円売り、国売りが始まったといわれ、国債価格が急落しかねない」とし、日銀の市場介入の効果も、「市場は一時的に動いても、すぐ戻る」と、無駄になるとした。


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(6) 公示地価12年連続下落(2003/3/25) ***

 国土交通省によると、1月1日時点での公示地価は、全国平均で前年比6.4%減となり、12年連続で下落した。下落率は93年(8.4%減)以来で、資産デフレが加速している状況が鮮明になった。住宅地の下落率は、5.8%と前年より拡大し、一方、商業地は同8.0%とやや縮小した。住宅地の地価は、バブル初期の87年と同水準に戻った。


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(7)株安、金融・企業を直撃(2003/4/1) ***

 31日の東京株式市場では、日経平均株価が急落し、年度末では21年ぶりに8000円を下回った。イラク戦争の長期化を懸念し、売りが急増した。過去1年間の下落率は27.6%に達し、東証第一部の時価総額は70兆円強減少した。大手銀行の自己資本比率は10%割れが相次いだ。銀行は国際決済銀行(BIS)の基準で、自己資本比率8%を経営の目安としている。また、生命保険会社も全体で含み損に転じた。生保の3月期末の株式含み損は、大手7社で2兆円程度と見られる。

大手銀行の自己資本比率(2003年3月末)
[グループ] [自己資本比率]
みずほ 9%程度
三井住友 10%程度
UFJ 9%台半ば
三菱東京 10%台半ば
りそな 6%程度
住友信託 10%台前半
三井トラスト 8%台半ば


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(8)りそな、公的資金申請へ(2003/5/17) ***

 りそな銀行などの持ち株会社である「りそなホールディングス」は、政府に対して公的資金の注入を申請することが明らかになった。今年3月末の自己資本比率が、国内だけで業務を行う銀行の最低の基準である4%を割り込む見通しとなったためである。

 政府は、預金保険法102条により、首相、関係閣僚、日銀総裁らによる金融危機対応会議を開き、「金融危機の恐れ」を認定し、公的資金の注入を決定する。りそなホールディングスの社長以下の現経営陣は経営責任を明確にするため、退任する。りそなの預金は全額保護され、ペイオフの対象とはならない。大手行が公的資金注入を受けるのは、99年3月以来4年ぶりである。預金保険法による注入は、今回が初めてである。


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(9)全大手銀行グループ、二期連続赤字(2003/5/27) ***

 大手銀行グループが発表した2003年3月期決算は、貸し倒れ引当金の計上など不良債権処理損失が五兆千九百四十一億円に上り、本業のもうけである業務純益を一兆円上回ったほか、株式市況の低迷で、7グループすべてが二期連続の税引き後赤字となった。本業のもうけである業務純益は前年並みであったが、株価下落による保有株の減損処理などの損失が計三兆円超に上り、赤字額の合計は四兆六千二百二億円に達した。3月末の不良債権残高は、前年同期比六兆三千五百四十九億円減の二十兆八千三百七十億円と二年ぶりに減少に転じたが、自己資本比率は、三菱東京フィナンシャル・グループを除く六グループが前年同期比で減少に転じた。

 大手各行は、破綻懸念先以下の債権(週刊トピック重要30用語参照)について、最終処理を十一兆七千七百八十四億円実施し、一方でデフレ不況により新たな不良債権が五兆千九百二十億円発生した。これにより、貸し出し債権全体に占める不良債権の比率は、七グループの平均で7.24%と前年三月末の8.45%より減少した。


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(10)内閣府、景気の谷2002年1月と判定(2003/6/7) ***

 内閣府は、景気の直近の谷を2002年1月と判定し、前回の谷からの期間は36ヶ月と戦後二番目の短さとなった。特に、景気回復期間が短縮化の傾向を強めているのは、日本経済の潜在成長力が低下しているのに加え、海外の景気動向に左右されやすくなっていることが原因として指摘される。現在の回復局面も力強さに欠け、戦後最短となった99年2月から2000年10月までの回復局面の21ヶ月をさらに下回る可能性がある。

 4月の景気動向指数も、一致指数が景気判断の分かれ目となる50%を4ヶ月ぶりに下回った。輸出の減速を反映し、生産関連の指標がマイナスとなっているためである。既に、今年1〜3月期に景気はピークを迎え、今は緩やかな景気後退に入っているというという見方もある。


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