11月第4週(11/16〜11/22)*印が多いほど頻出(最高3つの*)
(1)金融庁、資本注入行に2つの顔(11/17) **
公的資金を資本注入した銀行に、金融庁が2つの顔を見せている。大半の注入行には、経営責任論もちらつかせながら収益改善を求めているが、りそなグループには公的資金の回収を一時棚上げし、再生を粘り強く待つ姿勢を見せている。りそなには、今期の赤字計上や中小企業向け融資の減少も黙認する方針である。他行が出している公的資金の返済目標についても、一年の猶予を与えた。
対応の差には、根拠となる法律の相違が影響している。金融危機を防止するため、2兆円の資本増強に応じたりそなには、現在の預金保険法を適用した。他方、過去の注入行の大半は貸し出しを中心とする金融機能の強化に重点を置いた金融早期健全化法の対象である。ただ、りそなにも早期健全化法で注入した資金が残る。金融庁は、経営陣が変わるなど環境が激変していることを考慮すべきだとしている。再生が失敗すれば、国民負担になるため、りそなの舵取りは試金石になる。
(2)三位一体改革、補助金削減に省庁抵抗強く(12/19) **
18日に始まった経済財政諮問会議で、地方財政の三位一体改革などで、新提案が出された。
三位一体改革では、小泉首相が、2004年度に1兆円の国庫補助負担金を減らす方針を示したため、各省庁は削減項目の再検討を迫られそうである。また、同会議の民間議員は、地方への税源移譲も初年度で必ず実行するように求めている。
今のところ、来年度の縮減・廃止する補助金の候補としては、教員の給与の半額を国が負担する義務教育費国庫負担金(2兆7800億円)などがあがっている。
小泉首相の指示を実行するには、公共事業や社会保障関係の補助金を含め、さらに大胆に削減対象を増加させる必要がある。しかし、各省庁の強い抵抗が予想され、改革が進むかどうかは不透明である。
(3)年金改革―欠かせぬ財源論議(12/22) **
年金改革の議論を始めた自民党年金制度調査会には、党本部7階の会議室に、約90人が詰めかけ身動きができないほどであった。出席者からは、「抜本改革をしないと、来年の参院選は戦えない」など、様々な意見が出た。
厚生労働省による改革案では、厚生年金の保険料率を将来20%(現行13.58%、労使折半)まで引き上げ、給付水準は現役世代の平均手取り賃金と比べ最低50%を維持するとしている。この案は、基礎年金の国庫負担割合を現在の三分の一から二分の一へ引き上げることが前提とされている。この引き上げに必要な2兆7千億円の財源は、消費税率1%の引き上げに相当する巨額なものである。しかし、首相が消費税率引き上げを否定しているため、財源が見当たらない。
20%への保険料の引き上げは、企業負担が重過ぎるとして、経済界が16%を限界とし給付抑制も求めている。
我が国は、先進国で最も早いスピードで少子高齢化が進んでおり、将来の負担と給付を明確にすることが欠かせない。改革の裏付けとなる財源問題を先送りすれば、年金不振、政治不信がさらに高まる。 (国民負担率については、「公務員試験情報」の「財政学ミニ講座(平成16年度対策)」の「4.租税」を参照)