6月第1週(5/30〜6/5)*印が多いほど頻出(最高3つの*)
(1)大手銀行、公的資金返済―健全性アピール競う(5/31)
大手銀行が、国から受けた公的資金の本格返済に向け動き出している。大手銀行への公的資金は、優先株(利益配当が普通株に優先する権利の認められる株式で株主総会での議決権はないが、配当がゼロになると議決権が発生する株式)と劣後債の形で投入された。このうち、劣後債部分は、三井住友が全額返済し、みずほが3月に約5,700億円分を返済し、各行とも返済が進んでいる。焦点は、優先株の返済であり、7大グループで完済したのは三菱東京フィナンシャル・グループと住友信託銀行だけである。
みずほは、6月の株主総会で承認された後、政府や預金保険機構と優先株の一部を買入消却する方向で交渉に入る考えである。現在、2兆円に上る公的資金への依存を低め、健全化を急ぎ自立を目指す。三井住友は、今年度の最終利益が3,300億円と見通している。このとおりになるかどうか見極めた上で、返済計画を打ち出し、来年度から返済を始めたい考えである。利益金で優先株を買い、償却し、3年程度に分割して返済する案が有力である。
一方、UFJホールディングスは、04年3月期の赤字決算を踏まえ、大口融資先問題の解消などを優先する考えであり、返済計画の本格検討はまだ遠い段階である。
公的資金の返済方法は、買い入れ償却が基本となるが、一部を普通株に転換し市場で売却する形態や、優先株の第三者への転売など、多様な形態がある。証券市場の需給もにらみながら、何回かに分けて返済する方法が広がってくることになりそうである。
(2)景気動向一致指数、1年ぶり50%割れ(6/5) ***
内閣府が発表した4月の景気動向指数によると、景気の現状を示す一致指数は44.4%と、景気判断の分かれ目となる50%を下回った。50%割れは、2003年4月の18.2%以来、12ヶ月ぶりとなる。内閣府は、「一時的要因を除くと、基調として一致指数は改善の動きが続いている。5月は再び50%を超える可能性がある」と判断をしている。一方、景気の動きより数ヶ月先行する先行指数は66.7%と、8ヶ月連続で50%を上回った。
(1)中国企業の輸出額ランキング、台湾系が上位独占(5/31)
中国政府が発表した2003年の中国企業の輸出額ランキングで、台湾系企業が3位までを独占した。いずれも大手IT企業である。独立志向の強い陳総統の再選で中台の政治的緊張は高まっているが、経済的な結びつきは強まる一方である。
2003年の中国の輸出額は、前年比34.6%増の4,383億7千万ドルであった。
背景にあるのは、IT業界の世界的な水平分業の深化である。アメリカ企業から相手先ブランドでの生産(OEM)を受託した台湾企業は、台湾で開発や設計を手がけたのち、中国の巨大な工場で大量に製品を生産して輸出している。台湾のIT各社は、今年も好調な受注を追い風に、中国大陸での増産体制構築を急いでいる。
(2)アメリカ就業者大幅増―5月雇用統計(6/5) ***
アメリカ労働省が発表した5月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月より24万8千人増加した。この結果、就業者数の伸びは、3ヶ月合計で94万7千人に達した。力強い就業者数の伸びが確認されたことで、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が、6月29日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で、インフレ予防のための政策金利引き上げに動くとの市場の観測が、一段と強まりそうである。
5月の就業者数のうち、製造業は、コンピューターなどを中心に前月比3万2千人増加し、建設業が3万7千人増、サービス産業が17万6千人増など、幅広い分野で雇用が拡大した。