10月第5週(10/24〜10/30)印が多いほど頻出(最高3つの*)
(1)補助金削減の激しい攻防(10/29) **
国と地方の税財政を見直す三位一体改革で、全国知事会など地方側6団体が8月に打ち出した3.2兆円の補助金の削減案に対し、28日に省庁側の代案が出揃ったが、地方案を受け入れたのはごく一部である。
地方側は、省庁側の姿勢に対して総じて不満を示している。しかし、地方側の削減案には、国家百年の大計である義務教育や、自然災害を防ぐための治山・治水などの補助金が含まれている。こうした補助金をばっさり削減していいのかどうか、議論が必要である。
昨年、実現した1兆円の補助金削減は、中央省庁の抵抗を押し切り、小泉首相の裁断でやっと実現した。しかし、今回の削減対象である補助金の額や重要性は、昨年の比ではない。文部科学省の代案は、削減にすべて反対するゼロ解答であった。
三位一体改革の柱の1つである地方交付税交付金については、自治体をまとめる総務省と財務省が対立している。財務省は、自治体が国からの交付税を原資に、過剰な住民サービスをばらまいていると指摘した。この事実は総務省も認めざるを得なかった、交付税の大幅削減は、不可避であろう。
(2)日銀物価展望−デフレ脱却への詰めを誤るな(10/30) ***
日本銀行の物価展望によると、来年度の消費者物価指数の予測値は今年度より0.1%上昇するとしている。このとおりになるとすると、97年度以来、8年ぶりとなる。しかし、予測値の上昇率は小幅であり、日銀はデフレから完全に脱却できると確信する段階にはいたっていない。
この予測の背景には、デフレの要因であった需要不足状態が改善してきたことがある。また、原油価格などの高騰の影響が、消費者物価にも徐々に及んでいる。
しかし、値動きの激しい原油価格が下落すれば、消費者物価指数もマイナスへ転落しかねない。そのため、現行の量的緩和政策を継続すべきである。
(1)NY原油55.67ドル、史上最高値を更新(10/26) ***
ニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油相場は、一時、1バレル=55.67ドルを付け、史上最高値を更新した。中国、インドなどの新興市場の原油需要拡大に加え、アメリカ国内の暖房油の在庫が依然として低水準に留まっていることなどが、買い材料となっている。
(2)財政赤字3%守れぬ独仏見直し歓迎(10/26) **
EUが、ユーロ参加国に義務付けている「財政安定化・成長協定」の見直しに乗り出した。ドイツやフランスなど景気低迷により財政赤字が協定の定める対GDP比3%の上限を超える国が相次ぎ、現協定が現実的ではないという見方が広がってきたためである。EU財務相理事会は、来月16日からの会合から見直し論議を本格化させる予定である。
対GDP比3%の上限を超えた国は、財務相理事会に赤字削減の対応策を報告するが、不十分だと認定された場合、最高で対GDP比0.5%の金額をEUに預託しなければならない。2年後も赤字が解消されなければ、預託金は没収される。過度の財政支出を抑えることで、インフレやユーロの価値低下を防ぐ狙いがあった。
しかし、ITバブル崩壊後の景気低迷で、景気下支えの減税など財政赤字が拡大し、2004年は、ユーロ圏の半数の6か国が協定違反になる見込みである。特に、ユーロ圏一、二の大国である独仏は、2004年まで3年連続の違反が確実である。EUの執行機関である欧州委員会は、両国に対応を求めたが、最高意思決定機関である財務相理は、1年前に両国への赤字是正手続きを凍結し、協定は骨抜きにされた。
欧州委は、9月に協定見直し案を発表した。不況期で急激な財政収支改善が難しい場合や、累積債務が少なく財政の「持続可能性」が高い場合は、赤字縮小を達成するまで一定の猶予を与えることも盛りこんだ。同時に、赤字が3%を超えそうな国に、欧州委が財務相理の承認なしに早期警告を行うことができるとするなど、過剰赤字にならないための予防措置も強化した。
この欧州委案に対し、独仏は歓迎しているが、3%ルールを順守している中小加盟国は反発しており、意見対立が表面化している。ただ、欧州中央銀行のトリシェ総際は、欧州委案を批判しており、議論の行方は不透明となっている。
(3)金利引上げ、中国経済軟着陸へ一歩(10/29) ***
中国政府・中国人民銀行(中央銀行)が、9年ぶりに法定貸出金利を5.58%として、0.27%引上げに踏み切った。世界経済のリスク要因とされてきた中国の景気過熱の軟着陸に向け、中国当局がようやく動き出した。
国家統計局によると、7〜9月期の実質GDP成長率は、前年同期比9.1%増で、政 府の今年の目標である7%前後を大きく上回った。さらに、消費者物価上昇率も9月は前年比5.2%へと上昇しており、インフレ懸念もくすぶる。
今回の金利引上げの効果について、限定的との声もあるが、過熱景気の軟着陸には一歩前進との見方も少なくない。これまで、中国は、行政命令による建設プロジェクトの中止など強権的な景気抑制策に重点を置いてきた。利上げに踏み切ったことで、市場メカニズムを活用した景気過熱の抑制につながるとの期待感がもたれている。