12月第5週(12/23〜12/29)*印が多いほど頻出(最高3つの*)
(1) 日本セーフガード発動見送り(12/24) **
日本政府は、21日中国産ネギなど農産物三品目への緊急輸入制限(セーフガード)の正式発動を見送った。中国政府は、日本製自動車への100%の報復関税を近く解除する。両国が互いにWTOに提訴する事態は避けられたが、貿易摩擦は依然としてくすぶっている。結局、日本にとり、三品目の貿易保護より、自動車の輸出機会の損失の方が、 はるかに大きく、このような決着となった。一方では、WTOで認められているセーフガードの発動を、中国はWTO違反の報復関税により制することに成功したといえる。日本が報復関税をWTOに提訴しても、決着に1年以上かかり、三品目の中国の輸出額も年間240億円程度に過ぎない。協議が決裂しても、中国には失うものはあまりなかったのである。
(2) 予算政府案一般歳出4年ぶり減少(12/25) ***
政府は、24日の臨時閣議で2002年度予算の政府案を決めた。国債30兆円枠の維持のため、公共投資の一割削減などで、政策に充てる一般歳出を4年ぶりに減額した。都市再生、情報技術などの分野に予算を厚く配分したが、歳出構造や税制の改革は不十分といえる。国、地方の長期債務残高は、年度末に693兆円に膨らみ、基礎的な財政収支を示すプライマリ−バランスも拡大した。
2002年度予算案の3つのポイント
a.不況下での緊縮型
b.改革へ半歩前進―特殊法人向け財政支出は1兆円減
c.膨らみつづける借金−長期債務残高693兆円、プライマリーバランスは13兆円強の赤字
(注)プライマリーバランス:歳出から過去の借金(国債)の元利払いを除いた支出と、歳入から新たな国債発行を除く収入とを比べる。この差がゼロならば、国民が国に払う税金などの負担と、国から受ける公的サービスの受益が、同じ水準となる。支出が収入を上回り、赤字になると、現在の国民が負担以上の恩恵を受けているといえ、そのツケを将来世代に回していると見ることができる。プライマリーバランスは、バブル崩壊後、赤字続きである。
(3) 11月の失業率最悪5.5%(12/27) ***
11月の完全失業率は、5.5%と三ヶ月連続で過去最悪を更新する見通しとなった。世界経済の同時減速から、企業業績が急速に悪化し、設備投資は冷え込んでおり、個人消費も本格的に雇用環境に影響を与えつつある。業績回復を目指した企業の人員削減は続く見通しで、政府の失業率の見通しの上方修正は不可避となっている。
(4) 2001年度一人当たり名目GDP400万円割れ(12/27) **
2001年度の一人当たり名目GDPが、7年ぶりに400万円の大台を割り込む見通しとなった。内閣府の見通しでは、394万5千円と、前年度より約9万8千円少なくなる。物価下落のデフレ進行と、景気後退により、名目GDPが大幅に落ち込むためである。2002年度も物価下落に歯止めがかからず、名目GDPは減少が続く見込みで、一人当たり名目GDPは約391万円に落ち込む見通しである。
(1) アルゼンチン債務一時支払い停止へ(12/23) **
アルゼンチンの暫定政権は、公的債務の元利払いを停止し、元本を30〜50%削減、償還期間を30年に延長、利回りを2%に抑える方針である。元本は2年間、利払いは1年間の猶予期間を設置するとしている。このような事態は、国際金融界でも織り込み済みであるが、一般投資家の理解が得られるか微妙であり、アルゼンチンの経済危機は、新たな段階を迎える。同国の公的債務は、1300億ドルあまりとされ、このうち外貨建て債権は約900億ドルに達する。