12月第3週(12/15〜12/21)*印が多いほど頻出(最高3つの*)
(1) 邦銀、海外の貸し出し縮小(12/15) ***
今年に入り8月末までの邦銀の海外への貸し出しは、6兆円以上の減少と急速に減少 している。年間で10兆円減に達する可能性が大きい。邦銀海外支店の貸出残高は、8月末に21兆6,600億円で、昨年末より22.5%減った。同期間の国内融資の減少率の3.8%を大幅に上回る。国内の不良債権処理に追われているだけに、海外企業向け融資の貸倒れを回避するのが狙いである。
それと対照的に、外債投資は増えている。海外の債券の保有残高は、今年2兆1千億円増え、10月末で42兆円を超えた。国内でも、貸し出しを減らし、債券に投資しているが、海外でも同じ状況である。この背景には、自己資本比率規制問題もあり、貸し倒れリスクがある企業向け融資を減らせば、同比率が上昇するのである。政府の要望により、2004年度までに不良債権問題の解決のメドをつけることになっており、邦銀は同比率が低下しないように海外向け融資をさらに減らすとの見方が強まっている。
(2) 交付税特会借り入れ廃止―隠れ借金縮小へ(12/16) **
財務、総務両省は、地方交付税の特別会計による民間からの借り入れを、来年度から原則廃止する方向で最終調整に入った。今年度から打ち切る予定であったが、先延ばしし「隠れ借金」と批判されたが、来年度は打ち切る考えである。計算上は、その分国債発行が膨らむ。
国は交付税特別会計を通じ、地方の収支の差を埋めるため、国の一般会計から交付税交付金を約17兆円支給している。今年度予算では、同特別会計は民間から約2兆円を借り入れている。
(3) 財投3年連続2ケタ減―バブル前の水準(12/18) **
財務省は、「第二の予算」と呼ばれる財政投融資を、来年度は10%以上減の23兆円前後とする方向で、最終調整に入った。財投が、20兆円台前半になるのは、87年度以来16年振りである。財務省は、特殊法人からの要求額を合計3兆円前後削りたい考えである。今年度が5兆円減の住宅金融公庫は、昨年に続き2ケタの大幅減が確実である。また、国民生活金融公庫などの政府系金融機関への投融資も抑える方針である。そして、財投の約3割を占める地方向けについても、前年以下に抑える方向で、総務省などと調整中である。
(4) 月例報告景気判断―2ヶ月連続下方修正(12/19) ***
竹中経済財政・金融担当相は、月例経済報告を提出し、景気は持ち直しに向けた動きが弱まっており、おおむね横ばいとして、基調判断を2ヶ月連続で下方修正した。輸出と生産が弱含みで、景気が底ばい状態であることを認めた。生産が横ばいになったため、景気は停滞しているとの認識を示した。アメリカ経済の減速や大幅な株安で、景気の先行きへの懸念が強まっている。
(5) 産業再生機構の基本指針決定(12/20) **
銀行から不良債権を切り離し、再生可能な企業を再生させるという政府の産業再生機構の基本指針は、一石二鳥の狙いがある。来年4月にも発足する産業再生機構の債権買取では、対象となる企業に採算に合わない事業からの撤退など厳しい再建計画の作成を求めている。政府は、基本指針を踏まえ、産業再生機構の設置法案を来年の通常国会に提出する。基本指針は、再生機構と産業再生法を活用し、過剰債務を抱えた企業の再生と需要不足で過剰供給に陥った業界の再編を促す。
機構が買い取る主な対象は、銀行が金利減免などで支援している要管理先債権で、過剰債務を抱え、業績の急回復が見込みにくい大企業が中心である。基本指針によると、機構は、主力銀行以外の銀行から債権をまとめて買い取り、当事者を絞り込み企業の再建策を進めやすくする。機構は、追加融資や出資、保証などの機能を活用し企業の再生を後押しする作戦である。機構は、再生可能性の判断については、有識者で構成し機構内に設ける産業再生委員会の決定に委ねる。安易な延命を避けながら、再生を遂行するという重い仕事を機構は背負う。
(6) 日本への外国人旅行者、初の500万人超(12/21) **
国際観光振興会によると、1〜9月の訪日客数は、前年比8.9%増の397万人と通年では525万人に達するベースである。特に、アジアからの旅行者の伸びが目立っている。日本への旅行者は、昨年まで3年連続で増加している。航空運賃を含む旅行費用が安くなっているほか、アジアの個人所得が経済発展の中で高くなり、観光目的の旅行需要が上向いている。また、物価が高いとされてきた日本の印象が、最近のデフレで変わってきたこともある。
福田官房長官は、観光の活性化に向け、首相主宰の有識者懇談会を年明けに発足させると表明した。デフレで経済の停滞感が強まるなかで政府が後押しして観光産業をてこ入れしようという動きも出てきた。