本年(2001年)5月に東京華僑総会を訪ね、殷秋雄会長他同会本部の方々の御厚意を得て、善隣学生会館事件に関する当時のお話、現在の評価等のお話を聞かせていただくとともに、大量の資料を分けていただきました。その殆んどは、東京華僑総会の機関紙である「華僑報」のバックナンバーでした。この中から、私が独断と偏見で記事を選択し、このホームページに掲載させていただいています。

 ところで、華僑報は少数の特別な人々の間の新聞なので、非常にローカルな記事もあり、一般の人が読んでも内容を本当に理解することは難しいようなものもありますが、ここに紹介する「社会党が通達を出した」ことに関する記事は、早くから目をつけていたものでした。日本共産党重要論文集6には、この通達に反発して赤旗に発表された多数の論文が掲載されており、その一つ「日本社会党に質問する」は、すでにこのホームページに紹介していますが、当の社会党の通達の内容が明らかになっていなければ、議論の経緯が今ひとつ不明瞭になります。したがって、この記事に紹介されている社会党の短い通達は、事件後の論争の関係を理解する上で、重要であると思います。

 この通達に関して日本共産党重要論文集6に掲載されている論文は、五本に及んでいますので、今後おりを見て、これらの論文のいくつかを当ホームページに追加していきたいと思います。

2001年12月10日 猛獣文士

社会党、華僑学生を支持
−後楽寮襲撃事件で全国へ通達−
日中友好の破壊者「日共」と対立


確実な情報によると、日本社会党では、日本共産党中央指導部の直接指揮のもとで行なわれた後楽寮襲撃事件について、このほど中央執行委員会で正式に党の方針を決定、全国の下部組織への通達を出した。この通達で社会党は、この事件を調査した結果、日中友好運動の破壊者は日共であると断定し、今後事件の真相を広く日本国民に訴え、この「障害」を排除して真の日中友好を推進を全組織をあげて展開することになった。通達の全文は次のとおり。

日中友好運動及び善隣学生会館
事件に関する党の態度について
日本社会党中央本部
書記長 成田 知己
日中国交回復
特別委員長
黒田 寿男
同事務局長 矢山 有作
国民運動局長 山崎  昇

 連日の御奮闘御苦労様です。本年三月初め、善隣学生会館において、中国留学生と日本共産党との間に流血事件が発生し、内外の注目を集めたことはご承知の通りであります。

 本部はこの事件について直接介入することをさけ、国際的影響も考慮し、極めて慎重に配慮をして参りました。先般、中央執行委員会の決定に基き、関係者から事情を聴取するなど事情調査を行いました。調査の概要と今後の日中友好運動に対処する党の方針を次の通り決定したので指示します。


     記

一、この事件は、中国と日本共産党の路線の違いに端を発したものである。直接的には、善隣学生会館に貼られた壁新聞の掲示をめぐる事件であるが日本共産党中央指導部の直接指揮により、民青等を動員し、鉄かぶと、こん棒等による中国人学生等に対する襲撃傷害事件である。

二、日中友好運動は、日本共産党の路線変更により阻害されてきたが、この事件により「日中友好協会」による日中友好運動が破局的段階にたちいたった。

三、中国人学生等に数多の負傷者を出したことは、極めて遺憾なことであり国際的に見ても、放置できない。このような暴力を行った日本共産党の行為は支持できない。

四、善隣学生会館内の秩序は、警察官、並びに学生自治会の警備員によって監視及び維持されており平常なる館の運営は不可能の状態である。このまま放置しておくことは、長期に亘って対峙関係を続けることであって、さらに大きな衝突の危険を招くおそれがあると判断される。

五、善隣学生会館は、財団法人であって、十三名の理事によって運営されている。三月十三日、理事会が開催され、この事態を解決し、友好運動の前進を図るため、会館の一部を占めている「日中友好協会」に対し、定かん等に照らし、契約を解除し、明け渡しを決定し、口頭及び内容証明付郵便で申入れが行われている。更に仮処分、明渡訴訟等の法的措置が準備されている。

六、今後懸念されることはこのまま推移すれば、しばしば衝突事件が起こる可能性があること、又学生の出入りについて不安があることであり、この会館が日中友好運動ではなく日中妨害運動の拠点になる恐れがあると判断される。

 以上の調査から、党は、

一、イデオロギー論争には参加しないが、思想、信条をこえて中国と友好関係を結ぼうとする友好運動の本旨にかんがみ、この事件の真相を国民に訴え日中友好についてのあらゆる障害を排除し、その運動の前進を図るため積極的に努力する。

二、今や「日中友好協会による日中友好運動の展開」は不可能だと判断され、党は全国的に日中友好協会正統本部の組織が整備されつつある現状を見極め、この大衆的友好運動を推進する。


狼狽する日共、もみ消に躍起

 社会党の通達を知って一番驚いたのは、日本共産党に巣喰う反中国暴力団の頭目たちである。早速五月二十四日の「赤旗」で社会党の「態度決定と表明」はけしからんとの「見解」を発表、狼狽した野坂、宮本が血相をかえて社会党に「そんな事をされては困る」と文句をつけに行ったという。変質した日共指導部こそ事件の張本人であり、日中友好の妨害者だと社会党にはっきり指摘されたのが余程胸にこたえたと見える。

(華僑報1967年6月1日号1面)

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