日中国交回復から25年たった1997年9月17日に、朝日新聞社が「日中新交流の道」をテーマにした国交正常化二十五周年記念特別講演会を主催し、中国で長く両国関係の事業に携わってきた張香山(前中日友好協会副会長)、肖向前(中日友好協会副会長)、趙階g(中国社会科学院日本研究所研究員)の三氏が講演しました。ここで紹介するのは、その会場で行なわれた質疑応答ですが、このとき中国共産党と日本共産党の関係改善について問われた張香山氏が、1966年当時の断絶時を振り返り、「当時の我々には誤りの方が多かった」と語っています。翌1998年6月には、両党の関係が正常化されました。 このときの張香山氏の発言に関連し、日本共産党の不破哲三氏は、1998年7月29日の講演で、以下のように語っています。
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2000年10月14日 猛獣文士 |
質疑応答 |
張香山氏 日共との関係、我々に誤り |
肖向前氏 違い恐れず若者は議論を |
趙階g氏 外国軍駐留、いいとは思わぬ |
会場からの質問と講演者の答えは次の通り。
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――日本は侵略戦争によって一千万人以上の中国人民の犠牲を出したにもかかわらず、戦争責任を認めることを怠ってきた。これは日本の大きな過ちだが、他方で戦前の軍国主義者と戦後の日本人民は違うという建前を言い続けて北中国の政策にも誤りがあったのではないか。
張香山 戦後、中国にきた日本の人たちに対し、我々は毛沢東主席の言葉にのっとって、戦争に対する認識と責任を認めればいい、それについて謝罪する必要はないと言ってきた。つまり、日本がもし中国を侵略しなければ、中国人民が団結して強大な中国を築き上げて、日本帝国主義を打倒することもなかったということだ。一部の侵略の事実を認めようとしたない人たちに対しては、教育をしていかなければならない。ただ、それは自らが解決していく問題であって、我々が関知していくことではない。教育によって、若い人たちに侵略戦争を理解してもらうことが重要だ。
――中国共産党と日本共産党の関係はどうすれば改善できるか。
張香山 戦後、両党の関係は大変良かったが、後にイデオロギーと政策の面で異なる意見を持つようになった。中ソ共産党の論争が始まり、ベトナムへの立場の違いでも論争があった。さらに、(一九六六年の)中日共産党の共同声明をめぐっても、ソ連共産党の修正主義を名指しで反対するかどうかで食い違いが生じた。毛主席が(日共の見解に)反対して、中国側は日共に圧力をかけた。当時の我々には誤りのほうが多かったことを認める。ただ、日共は過去の色々なことをひとつひとつ明らかにすることを求めており、今のところ双方はまだ和解の合意に達していない。
――中国は米軍のアジアにおけるプレゼンスが地域の平和と安定にマイナスと考えているのか。
趙階g 中国としては外国の軍隊がよその国の領土にいることには賛成できない。しかし、国にはそれぞれの事情がある。米軍のアジアにおけるプレゼンスにも賛成の国と反対の国がある。それはそれぞれの国が決めることだ。しかし、個人的には外国軍の駐留は安全保障面でいいこととは思わない。
――アジアの多角的安全保障は対話の段階からどのような具体的行動に移るのか。欧州の北大西洋条約機構(NATO)とロシア、東欧との協力関係のようになるのか。
趙階g 欧州の安全保障体制とアジアは違う。二つの地域の社会制度や経済発展の背景、文化的背景などが違っているからだ。欧州の安全保障の体制をそのままアジアに持ってくることはできない。アジアの安全保障対話は大きな進展を見ており、特に東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)は一歩一歩行動の段階に入っていくと思う。ただ、具体的にどういう行動をとるか、またその行動をどの程度までにすべきかは、なかなか予想が難しい。
――最後に二十一世紀に向けての日中関係はどうあるべきか。それを担う若い世代に一言を。
張香山 確かに若い世代が二十一世紀の責任を負うべきだ。「青は藍(あい)より出でて藍より青し」で、新しい人が古い人を超えていくわけだ。歴史と世界情勢に対して新しい認識をもって、中日友好と世界平和にとって友好なことをしなければならない。
肖向前氏 我々は若い人たちに希望を託すべきだ。未来の世界は彼らのものだから、両国の青年は将来仲良くやっていけると思う。ただ、この間に意見の違いは免れることができない。それを恐れずに議論すべきことは大いに議論すべきだ。そして、互いに大いにつきあうべきだ。飛行機で二時間あまりの距離なのだから互いに訪問して、修学旅行なども大いに提唱すべきだ。もちろん、それには平等と互恵という条件があって、その上でよい友人になるということだ。
趙階g ケ小平氏も言っているように、二十一世紀、二十二世紀もずっと友好関係を続けていかなければならない。最近の世論調査では、青年の間で親近感が減っている。多くの原因があるが、まず互いの交流が足りないことがある。新聞やマスコミを通じて得られる情報は必ずしも正しいものとは限らないので、自分の目で実際に見ることが一番いい方法だ。
(「朝日新聞」1997年9月25日18面)