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2003年下半期 日本経済10大トピック

2003年下半期の日本経済のトピックで、特に重要なものを10件ピックアップしました。これは、週間トピックからの抜粋です。


(1) 株高と債権安の同時進行(2003/7/9) ***

 株価が1万円(日経平均株価)に達し、国債が値下がりし、金利が上昇しているのはなぜか。これは、自然なことであり、両方とも景気が回復しているときに起こることである。景気がよくなれば、株式の配当が増え、株式の値打ちが上がる。また、企業はお金を借りて設備投資をする。個人はローンを組んで、住宅を買う。お金を借りたい人が増えれば、金利は上がる。一方、景気が悪くなると、逆のことが起こる。

 また、少しでも有利な商品を探す投資家の動きも、株高・債券安に拍車をかけている。株価が上昇しているときは、債券を早めに売り現金にし、上昇しそうな株式を買う動きが出てくるのである。


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(2) 7地区で景気改善―日銀支店長会議(2003/7/23) ***

 日銀の支店長会議で、イラク戦争の早期終結やSARSの沈静化などで、日本の景気は、全体としてやや改善しているとの認識が大半を占めた。福井総裁は、「景気は横ばい傾向であるが、海外情勢の不透明感が後退する中で、設備投資が緩やかな持ち直し傾向にある」と、景気判断をやや上方修正した。また、大阪や名古屋など7支店が、景気が改善したとの認識を示した。7支店は、その理由として、海外情勢や設備投資の好転に加え、日米の株価回復やコスト削減による企業収益改善等を挙げた。


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(3)中小向け融資―公的資金注入行8行で減少(2003/8/8) ***

 金融庁は、公的資金の注入を受けている23行のうち、8行が中小企業向け貸し出しの計画を達成できなかったと発表した。みずほフィナンシャル・グループが5兆6340億円の大幅減少となるなど、8行が前年同期実績を下回った。貸し渋りなどの指摘もあるため、金融庁は8行に減少した要因を報告するように求め、それによっては業務改善命令を出すことも検討する。みずほは、1月に大幅減が確実であったため、金融庁から既に業務改善命令を受けている。

 また、税引き後利益は、13行が赤字で、計画を大幅に下回った15行(一部黒字行を含む)に、金融庁は既に収益向上を求める業務改善命令を発動している。この15行は、29日までに業務改善計画を提出する予定である。


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(4)日経平均一万円台回復(2003/8/19) ***

 東京株式市場で、日経平均株価が一年ぶりに終値で一万円台を回復したことで、1998〜2000年にかけてのIT相場のような長期の株価上昇局面が始まったとの期待が高まっている。しかし、デフレ不況の中でどこまで株価上昇が続くかは不透明である。

 4月28日のバブル崩壊後の最安値から7月第2週までの直近の高値までの市場のけん引役は、電気や自動車などのハイテク・輸出関連株であった。8月に入ってのリード役は内需関連株であり、内外の投資家が日本の景気回復に期待を高めていることが分かる。

 株価の長期下落に出口が見えてきた今こそ、政府・日銀が大胆な景気刺激策に踏み切るべきであるとの声は強い。


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(5)全国銀行貸出残高400兆円割れ(2003/9/9) ***

 全国銀行の8月の貸出平均残高が399兆4125億円と、91年調査開始以来初めて400兆円を割り、銀行が不良債権処理を加速していることが裏付けられた。また、デフレで借金の実質的な重みが増すなかで、企業側が借入金を少しでも減らす動きを強めていることも影響している。

 全国銀行の貸出残高は、96年に536兆円まで増えたが、その後減少に転じていた。背景には、銀行などの破綻が相次いだ97年以降、銀行は不良債権処理を進めてきたが、昨年10月の政府の金融再生プログラム(竹中プラン)で融資全体に占める不良債権の比率を2005年3月までに半減させるように求められたため、銀行は処理を急いだ。


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(6)10行利益下方修正―新経営健全化計画(2003/9/20) **

 公的資本注入を受け、金融庁から収益向上を求める業務改善命令を受けた15銀行・金融グループの経営健全化計画が公表された。15行のうち10行が、2004年3月期の税引き後利益を5月の時点の業績予想から下方修正した。金融庁は、四半期ごとに計画の進捗状況を点検し、来年3月期も大幅な未達となれば、経営責任を含め厳しく追及する方針である。また、大手5行は、4年間で140店舗、約1万2千人の人員削減によるリストラなどで、計画3年目から業績が急回復する予定としているが、景気動向次第で予断は許さない。


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(7)デフレ4年終息せず(2003/9/27) ***

 消費者物価指数の下落が、9月現在まだ続いている。前年同月比で、48ヶ月連続つまり実に4年連続で、消費者物価指数は下落を続けている。国際通貨基金(IMF)の定義では、デフレとは「消費者物価指数が2年以上下落した状態」としており、政府は、2001年3月に、日本経済がデフレに陥っていることを認めた。デフレ4年は、例のない不名誉な記録である。

 デフレが続くと、企業は物価下落で売上を減らし、借金の額は減らず、投資を抑え、リストラや賃下げに走る。個人も所得が減って消費ガ抑制される。結果として、経済が縮小してしまう。政府・日銀は強力なデフレ対策を進めなければならない。

 今春以降、消費者物価指数の下落幅が縮小してきたため、デフレが終息したとの見方が一部で出始めている。しかし、指数の下落幅縮小は、保険診療の自己負担アップやタバコ値上げなどの特殊要因が影響している。そのため、デフレが終わったと判断するのはまだ早い。日銀の福井総裁は、現在の金融緩和政策を続けると強調しており、当然の姿勢である。 日銀は、2000年8月に、デフレ懸念が払拭できるようになったとして、3ヵ月後に景気後退となったにもかかわらず、ゼロ金利政策を解除し、デフレを長期化させた。失敗を繰り返すべきではない。


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(8)大手銀行5グループ大幅増益(2003/11/26)***

 大手銀行7グループの9月中間連結決算は、みずほフィナンシャルグループの税引き後利益が前年同期比6.5倍となるなど、りそなホールディングスと三井トラスト・ホールディングスを除く5グループが大幅増益となった。景気の回復基調を背景に、取引先企業の経営改善などで、不良債権処理損失が見込みを大幅に下回ったほか、東京都の外形標準課税条例をめぐる訴訟が和解し、都からの返還金が合計で1,936億円に達したことなどが原因である。大手銀行7グループの不良債権残高も、今年3月末比で2兆8,190億円減少し、18兆179億円となった。自己資本比率も、5グループが10%を上回り、財務体質の改善が進んでいる。


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(9)日銀短観、業況改善でも円高で先行きに影(2003/12/13) ***

 日本銀行の12月の企業短期経済観測調査(日銀短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が、大企業製造業で9月調査より10ポイント改善のプラス11と、97年6月以来の高水準となった。中小企業も改善し、堅調な輸出を背景に、景気回復の動きが中小企業にも波及していることを示している。

 しかし、大企業の非製造業や中小企業の景況感は改善したとはいえ、依然マイナス圏に留まる。大企業の製造業と中小企業の非製造業のDIの差は、過去最大の39ポイントに広がり、規模や業種による景況感の格差は、むしろ拡大している。

 3ヶ月後の見通しを示す「先行き」は、大企業製造業が3ポイント悪化のプラス8と、4期ぶりに悪化した。中小企業の製造業も2ポイント悪化のマイナス15を見込んでおり、景気の先行きは決して楽観視されていないことが、明らかになった。

 (日銀短観については、「重要30指標」を参照)


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(10)地銀中間決算、格差顕著に(2003/12/18) ***

 全国の地方銀行64行の9月中間決算によると、本業のもうけを示す業務純益は、前年同期比19.0%増の7,072億円に増加したが、税引き後利益は2,781億円の赤字に転落した。足利銀行とりそなグループ傘下の近畿大阪銀行が、大幅な赤字となった影響が大きい。2行を除く合計は、2,131億円の黒字と前年同期比7.8倍に増え、多くの地銀は業績回復が鮮明となっている。税引き後利益が赤字となったのは5行で、2行減った。

 業務純益が増えたのは、人件費や物件費などの削減によるリストラ効果が大きい。一方で、貸し出しなどの資産運用収益は、前年同期比4.0%減の1兆7,843億円であった。

 また、不良債権処理による損失は、同32.3%増の6,775億円であった。9月末の不良債権残高は、10兆2,265億円で、3月比で4.6%減少し、大手銀行だけでなく、地銀も不良債権処理が進んでいることを示した。


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