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経済事情重要30用語・・・経済事情を理解するために、必須の30の経済用語の解説である。その時々の重要用語であり、情勢に応じ入れ替えがあります。また、各用語に関連する週刊トピックの記事にリンクできます。


1. ASEAN(東南アジア諸国連合)

 1967年8月タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールの東南アジア5カ国が結成した地域協力機構である。84年には、ブルネイが加盟した。78年からは、日本、アメリカ、EU、オーストラリアなどと拡大外相会議も開催している。92年1月には、首脳会議でASEAN自由貿易地域(AFTA)構想を採択した。その後、95年にベトナムが加盟し、97年にミャンマー、ラオスが加盟し、99年には、カンボジアが加盟し、計10カ国となり、人口5億人の経済圏が形成された。

2. EU(欧州連合)

 1993年11月に、欧州共同体(EC)から発展して設立された。2002年時点で、15カ国から構成される。98年5月の特別首脳会議で、99年1月からドイツ、フランスなど11カ国に単一通貨ユーロを導入することを決めた。EUの機構には、閣僚理事会、欧州議会、欧州裁判所、欧州委員会がある。このなかで、欧州委員会は、EUの行政機関にあたり、委員数は20人で多数決制である。トップの委員長は、EUを代表して先進国首脳会議(サミット)にも出席する。

3.日経平均株価

 アメリカのダウ・ジョーンズ社が開発した修正算式により算出される東京証券取引所第一部上場の225銘柄(企業)の平均株価のことである。平均株価というと、個々の銘柄の株価合計を銘柄数で割ったものであるが、これであると増資権利落ちや配当落ちによる値下がり分が含まれてしまう。これを修正して、長期にわたり平均株価を比較できるようにしたのが修正方式である。日経平均株価は、我が国の代表的な株価指標となっている。2000年4月に構成銘柄を見直し、30銘柄を入れ替えた。今後も原則として、毎年10月に構成銘柄の定期見直しを実施する。市場での売買高や売買高当たりの価格変動率を考慮し、市場全体の動きを反映するためである。

4.外形標準課税

 税収を安定させるため、所得のない赤字企業にも負担をさせるため、所得ではなく、資本、従業員数、給与総額、建物面積など一目で分かるものを標準にして税金を決める課税方式である。景気低迷のときには、赤字企業が増加し、企業の所得を対象とする法人税や法人事業税の税収が落ち込むため、景気に左右されない安定的な税収を確保するのが狙いである。

5.京都議定書

 1997年に地球温暖化防止会議で決定された議定書で、二酸化炭素などの温暖化ガスの先進国の排出削減目標が定められた。その内容は、2008〜2012年の間に、90年比で、アメリカは7%、欧州連合(EU)は8%、日本は6%削減しなければならないというものである。しかし、2001年に、アメリカが、国内経済に影響を与えるとして、同議定書から離脱した。各国の批准は進んでおり、2002年6月には、日本が批准した。そして、2004年9月にロシアが批准したことにより、発効規準をクリアし、ようやく発効のメドが立った。

 しかし、日本の2002年度の温暖化ガスの排出量は、90年比で、逆に7.6%増加しており、京都議定書の目標とは13%以上もの開きがある。そのため、日本の削減目標達成は困難と見られている。

6.景気動向指数

 内閣府が毎月発表する景気の転換点を捉えるための景気指標である。個別の景気指標が3ヶ月前と比較して上回っていればプラス、下回っていればマイナスとし、プラスの指標が全体のどれだけであったかを%で示す。50%以上であれば、景気は上昇過程にあり、50%以下であれば、景気は下降過程にあると判断する。これには、3種類あり、景気の先行きを示す先行指数、景気より遅れて動く遅行指数、景気と一致して動く一致指数とがある。

7.鉱工業生産指数

 毎月の鉱工業生産量を、ある時期の生産量を基準(95年=100)として指数化したものである。経済産業省が月別、年別に作成し、各統計の中で最も早く経済実態をとらえ、重要な指標となっている。石油、鉄鋼、化学、機会、繊維、食料品、金属、紙・パルプなどから536品目を選び算出する。

8.公債依存度

 予算において、歳入に占める公債発行の比率である。我が国の公債依存度は、1979年に34.7%へと上昇し、その後公債依存度を低下させるために、行財政改革が行われた。1991年には、バブル経済による税収増のため、公債依存度は9.5%へと近年では最低水準となった。しかし、90年代以降の景気対策のために、国債発行が急増し、1998年度は40.3%、1999年度には42.1%と40%台へ上昇した。2002年度の公債依存度は、相変わらず高水準であり、36.9%であった。

9.国際収支

経常収支

貿易・サービス収支

貿易収支・・・財の収支

サービス収支・・サービス(旅行・輸送等)の収支

所得収支・・・投資収益の収支

経常移転収支・・送金、消費財の援助等の収支

資本収支

投資収支

直接投資・・・支店の設置・拡張、外国法人の株式の10%以上の取得

証券投資・・・株式投資、債券投資

その他投資・・貸付、借り入れ、預金等

その他資本収支

資本移転収支・・資本財の援助

外貨準備増減

10.GDP

 国内において、経済活動の結果生産された租付加価値の総額である。内閣府が、各種の基礎統計を基に作成している。前年に比べ、今年はどれだけ増減したかが、経済成長率である。 

11.自己資本比率

 銀行の自己資本比率は、次式で示される。

自己資本比率=自己資本/資産

 資産とは、銀行の財産であり、企業への貸出、現金、保有する他の企業の株式、保有する国債などである。これらのうち、返さなくていいのが、自己資本である。銀行が株式の発行で集めた資金や、もうけたお金、払いすぎて将来もどる税金などが、これにあたる。逆に、預金などは、いずれ返す必要がある。比率の計算方法は、複雑である。銀行の資産は、種類により、いざというときに手元に戻る可能性が違うからである。このため、単に自己資本を資産全体で割るのではなく、安全度の高い資産が多いほど自己資本比率が高くなるように調整されている。例えば、通常の貸出、他の企業の株式は100%資産に組み入れられ、金融機関向けの債権は20%組み入れられ、現金、国債などは、0%である。自己資本は、経営が傾いたときに頼りになり、この比率が高いほど経営内容がよく、預金者への支払能力も高くなる。4月からのペイオフ施行後、この比率を気にする預金者が増えている。

12.自由貿易協定(FTA)

 自由貿易協定は、特定の国や地域が、互いに輸入品に関税をかけることや、数量制限などを原則としてやめる取り決めである。一般的に、経済力が上昇した国は、国内産業の保護より経済の活性化を優先し、貿易制限の廃止に動く傾向がある。  域外の国への関税率を統一する関税同盟を含めると、2002年6月時点で、143のFTAが成立している。最初のFTAは、1958年に欧州経済共同体(EEC)の成立を決めたローマ条約だといわれている。

 しかし、FTAは、1980年代までは、少なかった。世界的規模で多数の国が協議する関税貿易一般協定(GATT)があり、別の仕組みに頼る必要がなかったためである。しかし、GATTやこれを強化した世界貿易機関(WTO)に、発展途上国などが多数加盟し、交渉に時間がかかるようになった。WTOは、全会一致が原則であるためである。このため、90年代にFTAは急増した。いったんFTA締結の動きが広がると、他国に遅れまいとする国が増え、弾みがついた。アジアでも、締結の動きが広がっている。日本も2002年1月にシンガポールとFTAを締結し、ASEANとも来年から交渉を開始することが決まっている。アジア諸国は、関税率が高く、日本が交渉で得る恩恵は大きいといえる。        

 一方で、多国間のWTOの交渉も進まないと閉鎖的なブロック化が進むという懸念もある。

13.完全失業率

 総務省が、「労働力調査」で毎月発表しているもので、完全失業者を労働力人口で割った値である。完全失業者は、現在仕事をせず、仕事を探しており、仕事があればすぐにつくことが出来る人を指す。仕事探しをしない人は、非労働力人口とみなされる。完全失業率は、2001年7月に初めて5%台に乗り、その後も高水準を続けている。2002年10月の完全失業率は、5.5%となり、昨年12月の過去最悪水準と並んだ。男性の完全失業率は5.9%と最悪となり、女性のそれは5.1%となり、完全失業者数は362万人と増加傾向にある。  

14.デフレ

 デフレーションの略で、一般に2年以上の物価下落をデフレと呼んでいる。政府は、消費者物価指数が前年比1.0%減となり3年連続で低下したため、2001年度の経済白書で、「日本経済は、緩やかなデフレの状態にある」と記した。これは、第二次大戦後初めてのことである。いくつかの原因が考えられる。第一に、モノやサービスへの需要が不足し、価格を下げなければ売れなくなっているという事情がある。第二に、アジアからの安い製品が輸入され、値下げ競争を招いているという状況がある。

 物価が下がれば、消費者が同じ所得でより多くのモノが買えるのはプラスの側面である。一方で、企業の収入が減り給料が下がれば、消費の低迷が進む。特に、土地や株式などの資産デフレは深刻であり、企業は土地などを担保とした銀行からの融資が減り、設備更新に慎重になる。銀行も新規の貸出がしにくくなる。個人も手持ちの資産価格が低下すれば、消費を控えるようになる。多くの企業や個人がこのような行動を取る結果、投資や消費が冷え込むことになる。このため、政府は減税などの消費拡大につながるような政策を打ち出す予定である。

15.東証株価指数(TOPIX)

 銘柄ごとに上場株式数でウェート付けした時価総額を、基準時の68年1月の時価総額で割り算出する。株式市場の動向を、上場株式の資産価値の変化で見るものである。日経平均株価と並ぶ代表的指標である。市場全体の動向を的確に示す目的で、東京証券取引所が69年1月から発表している。

16.特殊法人・公益法人

 特殊法人は、政府が特に重要と考える産業を育成するために、法律により設立された機関で、公団、事業団のことをいう。日本放送協会、NTT、日本たばこ産業株式会社などもそうである。全額もしくは一部を政府が出資し、財政投融資資金を投入しているものが多い。全額政府出資の特殊法人を、政府関係機関という。しかし、行政改革のため、特殊法人の統廃合は重要課題となっており、官民の役割り分担やコスト効果の面から見直しが行われている。

 特殊法人が、総務省の認可を必要とするものであるのに対し、公益法人は、主務大臣の認可を要する。日本銀行や各省庁の共済組合などは、公益法人である。公益法人も、特殊法人と同様の趣旨により見直しが行われている。

 特殊法人も公益法人も、国は何らかの形で予算に関与を行っている場合が多い。ただし、政府関係機関の特殊法人以外は、関与が行われていても、国会の議決は不要である。

17.WTO(世界貿易機関)

 世界の自由貿易を進める機関で、GATT(関税貿易一般協定)ウルグアイラウンドの最終合意文書に署名した120カ国以上の合意により、1995年1月に発足した。GATTウルグアイラウンドで合意した協定を、参加国が守っているか監視する役割を持つほか、世界の貿易を自由化するための枠組みの構築を進める。協定に過ぎなかったGATTに比べ、常設の理事会も設置され、2年に1度閣僚会議も開催され、貿易に伴う国際紛争処理機能が強化されている。2001年11月に、カタールのドーハでの閣僚会議は、新ラウンドの開始を盛り込んだ閣僚宣言を採択し、新たな通商ルールを作るための新ラウンドが始まった。

18.NAFTA(北米自由貿易協定)

 1994年1月に発効し、アメリカ、カナダ、メキシコによる相互に市場を開放するための協定である。協定の主なものは、第一に、全品目の関税を、原則として協定発効から15年以内に全廃する。第二に、2000年までに、金融市場の全面自由化を達成する。第三に、現地部品調達率(ローカル・コンテスト)を8年後に62.5%にする。三カ国の99年のGDP合計は、9兆64億ドル、人口約4億1千万人であり、EUを上回る世界最大の経済圏である。

19.APEC(アジア太平洋経済協力会議)

 日本やオーストラリアなどの提唱により、環太平洋地域の経済協力体制が具体化し、1989年にオーストラリアのキャンベラで初の閣僚会議が開かれた。参加国は、日本、アメリカ、オーストラリア、ロシア、ASEANなどの21カ国・地域である。この地域は、高い経済成長を遂げているが、格差は依然として大きく、今後の発展を維持・強化するために相互関係を深めていくのが目的である。94年に、先進国は2010年、途上国は2020年までの貿易・投資の自由化をうたったボゴール宣言を採択した。2001年10月の上海での首脳会議では同時テロにより懸念される世界同時不況を回避する決意を示す首脳宣言を採択し、貿易・投資の自由化加速を確認した「上海アコード」も採択した。

20.日本銀行

 日本銀行は、政府と国民が半分ずつ出資する会社の形で、1882年に設立された。日銀の役割は、第一に、通貨を発行することである。ニセ札や汚れたお札が増えないようにするために、偽造しにくくしたり、古いお札を新札と替えたりする。第二に、物価の乱高下を防ぐのも、重要な役割である。この場合、お金の発行量を調節することにより、物価の変動を防ぐ。政府は、景気対策のために、お金の発行量を増やすように日銀に要求しがちである。これが、たびたびインフレの原因になったため、日銀には独立性が認められている。第三に、金融システムの安定である。銀行がつぶれかけ混乱が起きそうなときは、その銀行に日銀はお金を貸して危機を防ぐ。今回、銀行が持っている株を買い取るのも、株価が下がり銀行の体力が消耗し、危機が起きかねないからである。

21.日銀短観

 企業の収益状況や景況感を把握するため、日銀が民間企業を対象に3ヶ月ごとに実施している調査である。対象企業が多い上に、調査票の送付から結果公表までの期間が1ヶ月あまりと短く、足元の景気の実態に近い結果が得られる調査として重視されている。特に、大企業製造業の業況判断指数(DI)への関心が高い。2002年9月の調査対象は、大企業1387社を含む8500社である。業況判断指数(DI)は、景況感が「良い」と答えた企業の割合から、「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた値である。

 日銀は、2004年1月に、企業短期経済観測調査(短観)の調査方法を見直すと発表した。調査対象の業種や企業数を増やす予定である。聞き取り項目では、海外生産高などをやめる一方で、当期純利益の計画などを新たに加える。短観の精度を高めるのが狙いである。2004年4月1日公表予定の3月調査から、新方式になる。

 業種分類では、情報通信業、飲食店・宿泊業を新設する一方、既存のサービス業を「対事業所」と「対個人」に分ける。この結果、調査対象企業数は、2003年12月短観の8,204社から、10,848社に増える。聞き取り項目では、当期純利益と土地投資の計画額、コマーシャルペーパー(CP)の発行環境を加える。

22.プライマリーバランス

 国債の元利払いを除いた歳出と国債発行を除いた歳入との差である。均衡しているならば、行政サービスを借金に頼らないで実施していることを示している。赤字ならば、債務残高が拡大することになる。また、黒字ならば、債務残高が減少する。経済財政諮問会議は、構造改革や経済成長が持続できれば、現在赤字のプライマリーバランスは、2010年代には黒字になるとの見込みを示している。

23.不良債権

 1999年3月期以降、減少傾向にあった不良債権の残高は、再び増え始めた。2002年3月期末の大手銀行の不良債権は、1年前より49%増えて27兆円弱となった。景気低迷が長引いているうえ、金融庁が検査で不良債権を厳しくチェックするようになったためである。

 銀行は、不良債権を次の3つに分類している。

a.破産更生債権(破綻先債権)・・・事実上倒産した企業向けの貸し出しを指す。ほとんど回収困難となった債権である。

b.危険債権(破綻懸念先債権)・・・倒産する懸念が大きい企業に対する貸し出しである。業績回復のメドが立たず、利払いが滞っている企業への融資が、これに当たる。こうした、企業は、手持ちの資産を売っても返せないほど多額のお金を借りているケースが多い。

c.要管理債権・・銀行が貸し出し債権を放棄したり、金利を軽減・免除したりして経営再建を支援している企業向けの貸し出しである。流通・建設・不動産などの経営不振企業の大半が、ここに入っている。

 3月末の分類では、aが横ばいの3兆2千億円、bが44%増の12兆2千億円、cが80%増の11兆3千億円であった。cは、経営再建が失敗すれば、a、bにもなりうる。政府も、この要管理債権をどうするかがポイントになりそうである。

24.ペイオフ

 預金保険機構が破綻した金融機関の預金を、預金者に元本1千万円とその利息だけを払い戻すことである。2002年4月から、定期預金の元本1千万とその利息だけしか預金者への払戻しが保証されなくなった(ペイオフ実施)。2003年4月から、普通預金や当座預金などもペイオフが実施される予定であったが、厳しい経済情勢により、2005年4月まで延期された。 

25.ワークシェアリング

 就職を希望するすべての人の雇用を増加させるために、雇用機会、労働時間、賃金の3つの要素の組み合わせを変化させることにより、一定の雇用量をもっと多くの労働者に再配分することである。これは、景気対策による雇用拡大策とは異なるものである。政労使は、ワークシェアリングの実施のための環境整備を、今後進める予定である。

26.ODA(政府開発援助)

 ODAとは、政府開発援助のことで、先進国の政府が途上国の経済開発や福祉向上のために、お金や技術を提供することである。なぜ途上国への援助が必要か。日本の援助で、途上国の経済が安定すれば,軍事的侵略を受ける脅威が少なくなり、安全保障に役立つ。また、途上国の経済が発展すれば、日本製品の輸出先となり、日本経済にとり利益が大きい。また、イメージアップにもつながる。

 日本は敗戦後ODAの受け手でしたが、復興が進んだ1954年に初めてODAを提供した。日本の援助は、当初技術協力が中心であった。70年代には、財政に余裕が出てきたため、資金協力が援助の中心になった。80年代には、援助を拡大し、89年にODAの額がアメリカを抜いて世界一になった。しかし、90年代に、財政が危機的状況となり、ODA予算は減少し、今年度は3年連続前年比減少となった。苦しい財政の中で援助を行う以上、効果的な援助を行う必要が強まっている。

   [日本のODAと2002年度予算額−合計9106億円]
 1.二国間援助
  a.無償資金協力 2321億円
  b.技術援助   3415億円
  c.有償資金協力 2191億円
     (円借款)
 2.多国間援助−国際機関への出資や拠出 1180億円 

27.名目と実質

 「名目」という言葉を経済で使う場合、額面どおりのみたままという意味がある。普段、生活の中で目にする値といってもよい。「実質」は、実際の価値を表し、お金の価値が不変であったと仮定したときの値である。この30年間で、名目の給料は6倍になっているが、物価は3倍になっており、実質の給料は2倍になったことになる。通常は、名目の値の方が、実質より大きいのであるが、逆転することがある。これは、最近日本で起きていることであり、物価が下がるデフレが続き、お金の価値が上がっている。最近は、物価が2%近く下がっているため、ゼロ金利で名目の金利は0%でも、実質で2%の金利がつくのと同じである。

 最近のように物価が変動しているときには、名目と実質の両方に目配りする必要がある。

28.メルコスール(南米共同体)

 95年に、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイにより、EUのような共同市場を形成するために発足した。メルコスールの規模は、GNPの合計が9010億ドルであり、総人口は2億人近くになる。域内関税は、サービスを除く約90%の品目について撤廃され、対外共通関税は、85%の品目について平均12%を課す。隣接するチリとボリビアとは、96年6月に自由貿易協定を締結し、両国はメルコスールの準加盟国となった。

29.持ち株会社

 持ち株会社は、複数の会社の株式をもつ。自ら事業活動をしない場合を、特に純粋持ち株会社という。一社の組織に例えると、持ち株会社は企画・管理部門、傘下のグループ会社は製造・販売など各事業部門にあたる。持ち株会社は、司令塔としてグループの経営計画を立て、全体の利益が最大になるように人や資金を各企業に配分し、実際に仕事をするのは各企業で、収益も個別に管理する。持ち株会社は、利益が上がらない企業を売ることもできる。戦前は、三菱,住友など財閥本社が、持ち株会社を作り、金融など基幹産業を直接支配し、政治にも大きな影響力を及ぼしていた。このため、戦後は独占禁止法第9条で、禁止されていた。しかし、近年国境を越えた企業の競争が激しくなり、産業の効率化や活性化に役立つと考えられたため、経済界から解禁を求める声が高まってきた。そこで、97年に独禁法を改正し、半世紀ぶりに設立が解禁された。これまで、設立されたのは、16社である。多くは、銀行や証券など事業区分の垣根を越えた再編が加速する金融機関である。今後は、様々な事業を営む電機や商社でも、導入が本格化すると見られる。

30.連結納税方式

 子会社などの関連会社が、共同して納税する制度である。日本では、2002年度から出資比率100%の子会社を対象とした連結納税制度が導入された。この制度では、企業グループ全体の合算した益金に課税されるため、関連企業が1つでも大きな欠損を出せば、関連会社全体の益金が減少し、従来の個別申告による納税制度よりも、合計納税額が少なくなる。

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