インフォーメーション・サービス65
(1)03年経常収支黒字11%増、過去最大に(2004/2/13) ***
財務省の2003年の国際収支速報によると、経常収支黒字は、前年比11.6%増の15兆7,853億円と過去最大を記録した。2年連続の黒字幅の拡大である。世界的な景気拡大で輸出が伸び貿易黒字が増加した一方、イラク戦争や新型肺炎(SARS)により海外旅行が低迷したことによる。
貿易黒字は、4.4%増の12兆5,551億円、サービス収支は、3兆8,890億円の赤字で、赤字額は前年より1兆3,753億円の減少となり、所得収支は、8兆2,858億円となった。
2004年上半期 日本経済10大トピック
(2)雇用情勢改善も失業期間は長期化(2004/3/3) ***
昨年後半以降、完全失業率は低下傾向にあり雇用情勢は改善しているが、失業期間の長期化に歯止めがかからない。総務省によると、昨年10〜12月期の完全失業者のうち、失業期間が1年以上の割合は34.6%と、1年前に比べ3.8%上昇した。これは、2002年の調査開始以来最高であった。若年失業者のうち半数近くが、希望する職種がないとしており、若年層の就労支援が今後の焦点になる。
(3)メキシコとのFTA最終合意(2004/3/13) ***
メキシコとの自由貿易協定(FTA)で、両国は協定締結で最終合意した。政府は、来年1月の発効へ向け、詰めの調整に入る。
日本のFTAは、2002年に発効したシンガポールに次ぎ2カ国目であるが、農産物を含む包括的なFTAは初めてである。その骨子は、下記のとおりである。政府は、今後韓国、タイ、フィリピン、マレーシアとのFTA締結交渉を本格化させる。
[FTA合意の骨子]
1.日本は、豚肉やオレンジ果汁など農産品5品目に低関税枠を設定する。
2.メキシコは、自動車関税を7年目に、鉄鋼関税を10年以内に撤廃する。
3.相互の投資家に内国民待遇と最恵国待遇を付与する。
4.メキシコは、政府調達で、日本企業を差別しない。
5.貿易・投資を促進するためのビジネス環境委員会を設置する。
6.仲裁裁判所など紛争処理機関を整備する。
(FTAについては、「重要30用語」参照)
(4)公示地価13年連続下落、都心下げ止まり傾向(2004/3/23) ***
国土交通省によると、今年1月1日時点での公示地価は、全国平均で前年を6.2%下回り、13年連続で下落となった。都市再開発が進む東京都心部では地価が上昇した地点が増えるなど、下げ止まりの傾向が出ており、下落率は前年の6.4%から0.2%縮小した。一方、地方では、下落率が6.5%と前年の6.0%から拡大し、バブル崩壊後の最悪を更新しており、地価の二極化が顕著となっている。
三大都市圏では、地価の下落率が縮小しているが、地方の下落率は依然拡大しているのである。
74年の地価を全国平均で100とすると、住宅地は168.5となり、バブル経済のピークであった91年の296.4の56.8%にまで下落した。商業地は88.0で、最近30年間でも最低となっている。
住宅地 | 商業地 | |
全 国 | −5.7(−5.8) | −7.4(−8.0) |
三大都市圏 | −5.7(―6.5) | −5.8(−7.1) |
地方圏 | −5.7(−5.1) | −8.7(−8.7) |
注:カッコ内は前年の増減率 |
(5)新制度続々―企業活動どう変わる(2004/4/1) ***
4月1日から企業活動を取り巻く制度が変わり、各企業の戦略にも影響を与えそうである。地方税の法人事業税に外形標準課税が導入され、中小企業への消費税の特例が見直される。電力・ガスの自由化拡大や薬価の引下げは、関係する業界の業績を左右する。
企業が支払う法人事業税は、これまで課税所得の9.6%が標準的な税率であったが、外形標準課税では、利益への税率が7.2%に引下げられ、新たに人件費などへの税率が0.48%、資本金額に0.2%課税されるようになった。東京都など7都府県は、税率をさらに高くした。対象企業は、資本金1億円超の企業3万3千社で、全事業者の1.3%である。税収は景気により左右されにくくなるが、対象企業は赤字になっても税負担が生じる。UFJ総合研究所の試算では、上場企業の税負担は、1社当たり900万円増える。
消費税では、価格の総額表示方式の実施とともに、免税となる自営業者の売上高は3000万円以下から1000万円以下に引下げられる。
電力は、1日から自由化範囲が拡大し、これまでの大規模工場(契約電力2000kw委以上)に加え、オフィスビルや大規模スーパーなど(同500kw以上)も対象となる。例えば、イトーヨーカ堂も全国155の店舗が対象に加わるため、購入先の切り替えを検討している。一方、ガスは、大病院やシティホテル(年間契約量50万立方メートル以上)が、自由に購入先を選べるようになる。ガス会社は約230社もあり、地域ごとの再編・集約が進むとみられる。
そして、処方される薬価(国が定める販売価格)が、4月から平均4.2%引下げられる。薬は、先発品といわれる新薬と、新薬の特許期間が切れた後の後発医薬品に分かれる。後発医薬品は、先発品に比べ8割以下の価格であったが、7割以下に引下げられる。この改定で、大手製薬会社1社分の3,000億円の収入が減ると言われる。
(外形標準課税についは、「重要30用語」参照)
(6)東証一部の企業の2割超、最高益(2004/3/29) ***
今年2月と3月に決算期を迎える東証一部上場企業のうち、2割強の企業が過去最高の経常利益と最終利益を更新する見込みであることが分かった。過剰債務の削減や人減らしで企業の財務内容が改善したことに加え、株価の上昇など経済環境の好転も後押しした。
東証一部上場企業のうち、金融・保険業を除く1,238社の見通しでは、総売上高が前年比1.2%増であり、経常利益は17.9%増であり、最終利益が64.5%増であった。
好業績をけん引したのは、製造業の効率アップであった。資本の効率利用を示す総資本利益率は、昨年の4.3%から今年は5.3%に向上した。昨年は、効率性の目安とされる3%を下回った業種が9業種に上ったのに対し、今年は石油と非鉄金属の2業種のみに改善されている。
(7)消費者物価、下落幅縮小へ−日銀展望レポート(2004/4/29) ***
日銀の経済・物価情勢の展望(展望レポート)によると、政策委員の2004年度の消費者物価見通しの中央値は0.2%の下落で、昨年10月の0.3%より、0.1%縮小した。国内企業物価は、国際商品価格の高騰などを背景に0.2%の上昇を見込んでおり、97年度以来のプラス見通しである。デフレ圧力は緩和の方向にあるが、個人消費に波及するには時間がかかるという判断である。このため、当面、量的な金融緩和を継続する方針である。
[展望レポート2004年度大勢見通し](カッコ内は、中央値)
実質成長率 | 3.0〜3.2%(3.1%) |
消費者物価 | −0.2〜−0.1%(−0.2%) |
国内企業物価 | 0.1〜0.3%(0.2%) |
(8)3月の完全失業率、4.7%へ低下(2004/4/30) ***
総務省によると、3月の完全失業率は、前月比0.3%改善し4.7%となった。男子は4.9%と0.5%改善した。完全失業者数は前年同月比51万人減の333万人と、10ヶ月連続減少した。
また、2003年度平均の完全失業率は5.1%と、過去最悪の前年度比で0.3%改善した。年度平均の完全失業者数は、前年度比18万人減の342万人であった。
一方、厚生労働省によると、3月の有効求人倍率は、0.77倍と前月と同水準であった。雇用の先行指標とされる新規求人数は、前年同月比20.5%増と、21か月連続プラスの伸びを確保している。
(9)大手5行黒字転換(2004/5/25) ***
7大金融・銀行グループは、04年3月期決算を発表した。不良債権処理が遅れているUFJとりそなを除く5グループは、不良債権処理が大幅に減ったことから、当期損益が黒字に転じた。7グループの不良債権の総額は、約14兆円と前期比6兆円以上減少した。4千億円超の当期赤字となったUFJは、来春までの不良債権比率(不良債権÷貸出残高)半減を目指して、今年度中に約2.3超円の不良債権の最終処理を目指す方針である。
本業のもうけを示す7グループの業務純益は、貸出残高の減少などで前期より約1,400億円減って、3兆9,901億円であった。一方、不良債権処理にかかる費用が7グループで計3.6兆円と、前期の約5.1兆円より大幅に減り、業務純益の範囲内に収まった。さらに、景気回復を背景に株価が上昇し、03年3月期に計約3.3兆円の損失であった株式関係損益は、約6,400億円の利益に転じた。
政府が掲げる、不良債権比率を02年3月期比で05年3月期に半分に減らす目標は、三菱東京や住友信託は既に達成しており、同比率は2%台である。みずほも4%台であり、目標に近づきつつある。目標年度の05年3月期に、7グループで当期黒字を予想しており、不良債権比率の半減を達成する考えである。
一方、UFJは、不良債権に対する貸し倒れ引当金を大幅に積み増した結果、当期赤字が4,028億円に膨らんだ。そして、UFJ銀行の自己資本比率は、国際業務を行うのに必要な8%を若干上回る水準にまで低下した。UFJの3月末の不良債権残高は3.9兆円であり、不良債権比率は8.5%であった。そのため、不良債権の処理を進め、05年3月には3%台に急減させる予定である。
(10)公的資金新法成立―地域金融健全化へ(2004/6/15) ***
審議が遅れ成立が危ぶまれていた金融機能強化法(公的資金新法)と改正預金保険法の「金融二法」が成立した。これにより、地域金融機関への公的資金注入を2005年4月からのペイオフ全面凍結解除前に十分時間をかけて行えるようになった。危機対応会議を開かなくても、中小の金融機関に機動的に総額2兆円の公的資金が注入できるようになった。健全な銀行の体力を強化し、貸し渋りを抑え、債権放棄や経営不振の地域企業の処理も進められる。
金融庁は、99年に大手銀行に資本注入し、大手行を四大金融グループへの再編に向かわせたのと同じ手法で、地域金融機関にも再編や経営強化を促す方針である。竹中金融相は、金融機関に積極的な申請を呼びかけている。しかし、経営健全化計画が3年ごとにチェックされ、計画が達成されない場合には、経営者は退陣を求められるため、申請がなかなか出ない可能性もある。
一方で、申請してきた金融機関に資本注入を焦れば、淘汰すべき金融機関を延命させるだけとなる。金融庁は、厳しい金融行政の舵取りを迫られそうだ。