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2004年下半期 日本経済10大トピック

2004年下半期の日本経済のトピックで、特に重要なものを10件ピックアップしました。これは、週間トピックからの抜粋です。


(1)景気自立回復色強まる(2004/7/5) ***

 日本経済は、バブル崩壊後の長期にわたる停滞から脱し、自立的回復軌道に乗る助走段階にある。企業部門の改善が、雇用など家計部門にも波及し、設備投資と個人消費による内需主導の回復の好循環が生まれつつあり、デフレ脱却も視野に入ってきた。しかし、引締めに転じたアメリカや中国経済の先行き次第では、輸出が鈍化する懸念も残る。安定成長の実現には、日本経済の競争力を高める努力が一層必要である。


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(2)3月期の銀行の不良債権前年比8.7兆円減(2004/7/31) ***

 金融庁によると、全国128銀行の2004年3月期の不良債権残高が26兆5,940億円となり、前年比で8兆7,450億円減少した。減少幅は、統計を取り始めた99年3月期以来、最大となった。また、貸し出しに占める不良債権の比率も、ピーク時の2002年3月期の8.4%から5.8%まで低下した。

 大手銀行の不良債権残高は、13兆8千億円で、6兆9千億円の大幅減となったことが寄与した。一方、地方銀行は、12兆8千億円で、1兆9千億円減少した。

 不良債権処理による損失は、前年よりも1兆3千億円少ない5兆4千億円となり、本業の儲けである業務純益5兆9千億円を98年度以降で初めて下回った。


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(3)進む長期金利低下(2004/9/3) ***

 長期金利の低下が進んでいる。代表指標である新発十年物国債の流通利回りは、1.47%まで低下し、3ヶ月ぶりに1.5%を割り込んだ。背景には、日米で景気減速懸念が強まり、日銀が量的緩和政策を早期に解除するとの見方が遠のいたことである。

 長期金利は、6月17日に、一時3年9ヶ月ぶりに1.94%をつけたが、8月6日のアメリカ雇用統計で、非農業部門の就業者数が1月以降で最も小さい伸びに留まったことなどで、アメリカの長期金利が低下し始めると、日本の長期金利も連動して低下に転じた。さらに、日本の4〜6月期の実質GDP成長率が、前期比の年率換算で1.7%と市場の予想(4%程度)を大幅に下回り、金利低下の流れを決定づけた。

 また、消費者物価指数が、先行きマイナスで推移するとの見方が強まっていることも、量的緩和解除が遠のいたとの見方の主な要因である。7月の消費者物価指数は前年同月比0.2%の下落となり、前年同月比マイナスは5ヶ月連続となった。消費者物価指数の前年比伸び率が安定的に0%以上という日銀の量的緩和の解除条件満たすには、不十分な状況であるうえ、今後、電気料金やコメの前年比での値下がりが予想され、デフレ脱却は難しいとの見方が増えている。

 こうして、市場では、量的緩和策解除は、来年以降に先送りされたとの声が高まっている。


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(4)日本卸電力取引所、来春開設へ会員募集(2004/9/17) **

 発電業者が電力を融通しあう来年4月開設の日本卸電力取引所が、参加会員を10月から募集すると発表した。取引所を通じた電力取引は日本では初めてで、電力の自由化が進む中で、余剰電力の取引が活発化し、電気料金の低下が期待される。

 余剰電力の売買は、これまで電力会社間の相対取引が中心であったが、取引所を通して市場取引を活発化させる狙いがある。同取引所は、昨年11月に設立された有限責任の中間法人であり、一般の電力会社や、新規事業者や自家発電業者など、計21社で構成される。取引開始時点では、設立メンバーに加え、自家発電を行うメーカーなど数十社の参加が見込まれる。

 売買は、千kw単位の現物取引で、翌日の時間帯ごとに電力を業者間で売買するスポット取引と、翌月分をまとめて先渡しをする取引の二種類である。

  欧米では、取引所による電力売買で、電気料金の引下げが進んだケースが見られる。


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(5)基準地価―都心住宅地上昇、全国平均13年連続下落(2004/9/22) ***

 国土交通省によると、土地取引の目安となる7月1日時点の都道府県地価(基準地価)は、全国平均の地価が、前年比5.2%値下がりし、13年連続の下落となったが、下落率は0.4%縮小した。一方、東京都心部の住宅地は、17年ぶりに上昇に転じた。また、周辺地域にも、地価の上昇や横ばい地点が広がっている。

 東京の区部都心部(千代田、中央、港、新宿、文京、台東、渋谷、豊島の8区)の住宅地の地価は、前年比0.3%の上昇となった。都心のマンションが人気を集め、開発会社による土地取得競争が要因と見られる。また、商業地と住宅地を合わせた東京圏の地価上昇地点数は、前年の19から71に急増した。

 全国平均の地価下落率が縮小するのは7年ぶりで、都心部を中心に下げ止まり傾向が強まっている。景気回復に加え、再開発事業が相次いでいることから、不動産投資が活発化したためである。

 一方、地方圏の平均下落率は5.2%と、前年より0.1%拡大しており、「二極化」も鮮明となっている。

 長期的に見ると、1977年の地価を100とすると、住宅地の指数は156.8で、ピークであった1991年の225.0の約7割の水準になった。商業地は、95.1と初めて100を切り、91年のピークの226.7の約4割の水準になった。

[地価の変動率]
東京都全体
 住宅地 −2.7%(−4.1%)
 商業地 −2.0%(−3.9%)
都心部8区全体
 住宅地 0.3%(−0.9%)
 商業地 −1.3%(−3.4%)
注:地価の公的指標としては、土地取引の目安となる基準地価のほかに、国土交通省が1月1日に調べる公示地価や、相続税の評価基準として国税庁が発表する路線価などがある。


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(6)大手銀行の不良債権比率、6グループで半減達成へ(2004/11/5) ***

 大手銀行・金融グループのうち、UFJホールディングスを除く6グループが、表のとおり、2004年9月末時点で不良債権比率の半減目標を半年間前倒しで達成する見通しとなった。みずほは、2002年3月末以降で最も高かった6.4%の半分以下となるために達成となる。景気回復の追い風もあり、不良債権の新規発生が大幅に減少していることが原因である。これにより、大手行間の競争は、今後収益強化に焦点が移ることになる。

 半減目標は、不良債権比率を2005年3月末までに、2002年3月末の半分以下にするもので、竹中前金融担当相が2002年秋に「金融再生プログラム」として打ち出した。

 今年、9月末で9%台に高止まりするUFJも、大口融資先の処理が進んでいることから、2005年3月末は不良債権比率が3%台まで下がり、半減目標の達成は可能としており、全グループが期限内に半減目標を達成する見通しである。

 [大手銀行・金融グループの不良債権比率(%)の推移]
グループ名 2002年3月末 2004年9月末(見込み)
三菱東京  8.1 2.7%(6月末見込み)
住友信託  6.1 2%代前半
みずほ  5.7 3.1
三井トラスト  9.2 3%台後半
三井住友  8.9 4.4
りそな 10.2 4.8
UGJ 12.7 9%台


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(7)14年ぶりの設備投資2ケタ増(2004/11/15) **

 日本経済新聞社による2004年度の設備投資動向調査によると、全産業の設備投資は、前年度実績に比べ10.4%増加した。2ケタ増は、1990年度以来14年振りである。特に、業績好調な自動車、電気などの積極投資が目立った。一方、大型投資が続いた鉄鋼や通信など一部業種で一服感が出ている。

 調査の対象となったのは1,675社で、全産業の伸び率は5月集計の当初計画に比べ、4.9%上方修正された。製造業は、前年度比16.9%の高い伸びであった。非製造業は、当初計画が同0.1%減であったが、2.4%に上方修正され、8年ぶりの増加に転じた。内閣府による7〜9月期のGDP速報値では、設備投資が実質で前期比0.2%減となったが、今回の調査を見る限り、少なくとも今年度いっぱいは高水準の設備投資が続きそうである。


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(8)三位一体改革全体像決まる(2004/11/27) ***

 政府・与党は、国と地方の税財政を見直す三位一体改革の全体像を決めた。2005,2006両年度の補助金削減額は、約3兆円程度とし義務教育費国庫負担金など2兆8,380億円の削減を具体的に明記した。地方への税源移譲額は、今年度実施分の6,558億円を含めて3兆円程度を目指すとして、この8割相当の2兆4,160億円の移譲を固めた。政府は、来年の通常国会に関連法案を提出する。政府は、残る約6,000億円の税源移譲を実現するため、来年秋までに生活保護費や児童扶養手当などを見直し、補助金策減額を積みます方針である。

 全国知事会の梶原会長は、「受け入れられるぎりぎりの内容だ」と述べている。

 補助金削減、税源移譲と並び、三位一体改革の柱である地方交付税改革は、2006年度までは、地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保するとした。

 税源移譲の方式は、国税である所得税の減税と、地方税である個人住民税の増税で行うことを基本とする方針である。


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(9)一致指数、3ヶ月連続50%割れ(2004/12/1) ***

 内閣府によると、10月の景気動向指数(速報)の、景気の現状を示す一致指数は、3ヶ月連続で景気判断の分かれ目となる50%を下回る見通しとなった。3ヶ月連続の50%割れは、景気後退の危険信号とされ、景気の先行きの不透明感が強まりそうである。2002年1月を谷とする今回の回復局面で、一致指数の3ヶ月連続の50%割れは初めてである。

 特に、10月の鉱工業生産指数が前月比1.6%も低下したことが、先行きの懸念を強めている。台風や中越地震の影響もあるが、景気のけん引役となってきたデジタル家電やパソコン向けの電子部品・デバイス工業の落ち込みが目立ったためである。

景気動向指数については、「重要30用語」参照)


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(10)日銀短観、景況感7期ぶり悪化(2004/12/15) ***

 日銀が発表した12月の日銀短観によると、企業の景況感を表す業況判断指数[DI](景況感が良いと答えた企業の割合から悪いと答えた企業の割合を引いた値)は、大企業製造業で前回の9月調査に比べ4ポイント悪化し、プラス22となった。悪化は、7四半期振りである。景気のけん引役であったIT関連産業などで、生産や輸出が鈍化した。しかし、大企業非製造業や中小企業の景況感は横ばいかやや改善し、日本経済は踊り場にさしかかりながらも、なお底固さを維持する姿となっている。

 一方、雇用の過剰感は薄らいでいる。雇用が過剰と答えた企業の割合から不足と答えた企業の割合を引いた雇用人員判断指数は、大企業製造業で1ポイント低下の6となり、12四半期連続の縮小となり、12年ぶりの低い水準となった。

 3ヵ月後の先行き判断指数は、大企業製造業と非製造業が、それぞれ7ポイント、1ポイントの悪化となった。円高や海外経済の減速を背景に、輸出採算の悪化を懸念する見方が強い。

日銀短観については、「重要30用語」参照)

業況判断指数(DI)の動き
今回(前回比) 先行き(今回比)     
大企業製造業 22(−4) 15(−7)
大企業非製造業 11( 0) 10(−1)
中堅企業製造業 11(−3) 2(−9)          
中堅企業非製造業 −4(−2) −3( 1)
中小企業製造業 5( 0) −1(−6)
中小企業非製造業 −14( 3) −18(−4)


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