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2004年下半期 世界経済10大トピック

2004年下半期の世界経済のトピックで、特に重要なものを10件ピックアップしました。これは、週間トピックからの抜粋です。


(1)原油高騰止まらず(2004/8/5) ***

 ニューヨーク・マーカンタイル取引所で、原油先物相場が、史上最高値の1バーレル44ドル台をつけるなど、高騰が続いている。原油高が長期化すれば、石油化学製品に一層の値上げが相次ぐか、製品価格に転嫁できないメーカーに減産の動きが広がるのは必至であり、各国の景気回復に悪影響を及ぼす懸念も広がってきた。

 市場では、需給バランスに時間がかかるとの見方から、47〜48ドルへの上昇を予測する向きもある。高騰に歯止めがかからない背景には、中国やインドなどで需要が急増しているのに、パイプライン建設など産油国の供給能力増強が追いついていないことへの懸念がある。一方、中東の石油関連施設を狙ったテロ攻撃などもあり、9月以降も高騰が続くとの見方が広まっている。


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(2)WTO枠組み合意を採択(2004/8/2) ***

 世界貿易機関(WTO)の一般理事会は、1日未明、新ラウンドにおける貿易自由化の大まかな方向を示す枠組み合意案を採択し、閉幕した。また、2005年1月1日の新ラウンドの包括最終合意の期限は、少なくとも1年延長されることになった。

 枠組み合意では、焦点の農業分野で、アメリカの綿花を含む大規模生産者への国内助成が大幅削減される。EUの巨額の輸出補助金も一定期間内に撤廃するが、具体的な進め方は今後の協議に委ねられた。日本が重点項目とするコメなどを「重要品目」として、関税の大幅引下げの例外扱いとする方向が示された。しかし、何を「重要品目」とするか、関税の下げ幅をどうするか、例外扱いの代償措置としての低関税輸入数量枠の拡大の有無など、肝心な点の議論はこれからである。すべての農産品に関税の上限を設ける「上限関税」は、日本など輸入国の反対により、結論を持ち越している。

 ただ、今回の合意は、関税率など具体的な数値を決めない中間合意に過ぎない。また、加盟国の間で見解が一致しない点については結論を先送りし、今後の交渉の難航も予想される。


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(3)ユーロ導入のため財政に大なたー負担増に国民反発(2004/8/28) ***

 欧州連合(EU)に新規加盟したばかりの東欧のポーランド、チェコ、ハンガリーで、現職首相が相次いで辞任に追い込まれる異常事態となっている。三カ国とも、数年後の欧州単一通貨ユーロ導入を次の目標としているため、欧州規準を満たすために、経済財政改革を行っているが、国民が反発している。

 どの国も、外国からの投資による生産基盤強化、経済発展加速のシナリオを描いているが、ユーロ参加には、財政赤字を対GDP比3%以下に抑える基準を満たす必要がある。各国の財政赤字の対GDP比は下記のとおりであるが、達成には、社会主義経済の名残もある経済構造に大なたを振るう必要がある。しかし、緊縮財政は、公共事業削減、福祉での国民の負担増を伴い、野党の格好の攻撃材料となる。ユーロ導入には、相当な背伸びが必要である。

[2003年の各国の財政赤字の対GDP比]
ポーランド 4.1%
チェコ 12.3%
ハンガリー 5.9%


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(4)アメリカ財政赤字、2004会計年度最悪更新見通し(2004/9/8) ***

 アメリカ議会予算局は、2004会計年度(2003年10月〜2004年9月)の財政赤字が4,220億ドル(約46兆円)となり、イラク戦争の出費の増加などにより、2年連続で過去最大を更新するとの見通しを発表した。ただし、景気回復による税収増加により、3月時点の予測より赤字額を550億ドル減額した。


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(5)フランス、違反是正のため来年度予算緊縮へ(2004/9/28) ***

 フランス政府が、2005年度予算で財政赤字の大幅削減に乗り出した。3年間続いたEUの財政安定化・成長協定への違反状況を是正する。

 25日に閣議決定された2005年度予算によると、財政赤字の対GDP比を来年度2.9%に縮小する方針を示した。実現すれば、4年ぶりに協定順守となるが、協定違反に対するEU内の反発を解消することにある。

 フランスは、3年連続で対GDP比3%を突破し、ドイツとともに景気対策のために協定違反を続ける「大国のエゴ」を批判する声が強い。これにより、フランス国内では、EU内での影響力低下に対する危機感が強まっていた。今秋、発足する欧州委員会で得たポストも、主要ポストではなかった。

 協定は、ユーロの信用性を守るものであり、EUの第2の大国であるフランスは、協定を順守する姿勢を見せることで、主導権の維持を図りたい意向である。


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(6)ユーロ圏回復に足かせ、失業率高止まりや原油高(2004/10/20) ***

 ユーロ圏経済の足取りが重い。高失業率などで内需が伸び悩み、原油高が景気腰折れの懸念を高めているためである。史上最低の政策金利を維持する欧州中央銀行(ECB)も、景気とインフレの両にらみで、難しい判断を迫られている。

 ECBは、10月の月報で、今年前半の回復の動きが当面は継続するとして、4〜6月期まで四・四半期続いたプラス成長が、持続的な景気回復につながっていくとの見方を示した。

 しかし、足元の経済指標には陰りが見られる。ユーロ圏経済最大のドイツでは、製造業の景況感指数が、8、9月と2ヶ月連続で悪化した。特に、深刻なのは、高止まりしている失業率である。ユーロ圏の失業率は9.0%に達し、3年前に比べ1ポイント上昇した。背景には、5月の欧州連合拡大にあわせ、独仏などに比べ人件費の安い東欧への工場移転が加速してきたことがある。EUの欧州委員会も、今月初めの四半期報告書で、個人消費は引き続き弱く、設備投資も伸び悩んでいるとし、懸念を表明した。

 また、史上最高値を更新する原油価格も、先行きの懸念材料となっている。ホアキン欧州委員も、現在の原油価格が続けば、EUの成長率が0.3%押し下げられるとの見方を示した。原油高が物価上昇につながれば、ECBは利上げせざるを得ず、その場合、EU経済への打撃は大きい。


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(7)金利引上げ、中国経済軟着陸へ一歩(2004/10/29) ***

 中国政府・中国人民銀行(中央銀行)が、9年ぶりに法定貸出金利を5.58%として、0.27%引上げに踏み切った。世界経済のリスク要因とされてきた中国の景気過熱の軟着陸に向け、中国当局がようやく動き出した。 

 国家統計局によると、7〜9月期の実質GDP成長率は、前年同期比9.1%増で、政 府の今年の目標である7%前後を大きく上回った。さらに、消費者物価上昇率も9月は前年比5.2%へと上昇しており、インフレ懸念もくすぶる。

 今回の金利引上げの効果について、限定的との声もあるが、過熱景気の軟着陸には一歩前進との見方も少なくない。これまで、中国は、行政命令による建設プロジェクトの中止など強権的な景気抑制策に重点を置いてきた。利上げに踏み切ったことで、市場メカニズムを活用した景気過熱の抑制につながるとの期待感がもたれている。


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(8)アメリカの双子の赤字(2004/11/5) ***

 ブッシュ大統領は、3年前に財政黒字を引き継いで発足し、国民に返済するとして減税に踏み切った。しかし、テロ対策やイラク戦争で出費がかさむ一方で、景気対策のために減税を重ね、2004年度は4,125億ドルの史上最高の財政赤字となった。大統領は、減税恒久化を約束しているため、議会予算局の試算では、10年まで3,000億ドル前後の財政赤字が続く見通しである。

 一方の経常収支赤字も、最高記録を更新しつづけ、04年は6,000億ドル台を突破しそうな勢いである。対GDP比でも、初めて5%台となるであろう。この経常収支赤字を続けるためには、それに見合う資金が海外から流入し続けなければならない。膨大な赤字により、資金流入が止まれば、ドルは即座に急落する。長期金利も上昇し、株式市場は動揺する。ひいては、世界経済の波乱要因となるであろう。

 この双子の赤字の主な要因は、過剰消費体質である。可処分所得に対する個人の貯蓄比率は、0.4%(7〜9月期)に過ぎない。財政赤字も、政府のカネの使いすぎであり、国の過少貯蓄の原因となっている。

 ブッシュ政権は、景気失速を避け、財政再建も目指す二律背反の政策運営を迫られる。現在の好況の追い風があるうちに、財政再建に向けた足固めをする必要がある。


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(9)京都議定書2月発効―ロシア批准(2004/11/5) ***

 ロシアが、地球温暖化防止のための京都議定書を批准し、来年2月に同議定書は発効する。これにより、温暖化防止に向けた世界の取組みが始動する。今後は、同議定書を離脱したアメリカを、国際的な枠組みに戻すことも大きな課題となる。

京都議定書については、「重要30用語」参照)


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(10)中国WTO加盟3年(2004/12/11) **

 中国が世界貿易機関(WTO)に加盟し、11日で丸3年を迎える。外国の投資会社に対して、流通事業への参入が同日から解禁されるなど、中国政府はWTO加盟時の段階的な市場開放という約束を順守しているように見える。しかし、不透明な規制が横行するなど、実質的に市場開放を拒んでいる面も少なくない。

 中国政府は、今月1日に、外国銀行が人民元取り扱い業務をできる地域として、新たに北京など五都市を開放した。しかし、邦銀が中国で支店を増やそうとしても、支店開設の認可がなかなか下りないのが現状である。

 また、中国政府は、来年1月1日からWTO加盟時の約束により、自動車の輸入枠を撤廃する計画である。しかし、立法により、最終的には、地域ごとに全体の需要を見て輸入認可を出す仕組みで、新たな輸入制限となる可能性が大きい。

 7月には、改正対外貿易法を施行し、申請すれば、誰でも商品の輸出入が可能になった。そして、国内販売も、外国の投資会社の卸売りなど流通事業への参入を、11日から認める。しかし、自由に販売できるのは、投資会社の親会社が50%以上株式を持つ関連企業が作る製品に限られている。

 このように、WTOとの約束とは別次元で、不透明な規制が横行しているといえる。


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