5月第3週(5/9〜5/15)*印が多いほど頻出(最高3つの*)


[世界経済]

(1)もたつく欧州景気(5/10) ***

 ユーロ圏を中心とする欧州経済の回復が、日米に比べもたついている。ドイツを初めとして消費低迷も続く。1日に25カ国体制となった欧州連合(EU)拡大は、復調の切り札になるのか。

 ユーロ経済は、出遅れ気味だが緩やかな成長が戻ってきた。電機、化学、自動車など輸出が伸びている。しかし、力強い成長に戻れる確証はいまだない。

 個人消費の低迷と並び、ユーロ高も景気に悪影響を与えている。日米に比べ、相対的に金利が高いことが一因である。為替相場は、1ユーロ=1.2ドル程度であるが、購買力でみると2割は過大評価されている。

 独仏の不振をアメリカが批判しているが、ユーロ圏の「安定・成長協定」があり、需要追加型の財政政策は許されない。最も適切な改革は、高コスト構造を改めることである。一方で、この改革への不安が、消費低迷をもたらしているともいえる。

 EUに10カ国が加わったことは、日本にとっての中国と同様に、貿易相手として大きな潜在力を秘めている。機械など資本財の需要は多く、西欧にも経済成長の恩恵をもたらすことは確かである。しかし、賃金格差は大きく、例えば、ポーランドの賃金水準はドイツの6分の1である。低賃金競争で生産拠点が中東欧に移れば、雇用が脅かされる危険があるが、現在の日本をみてもこの危険性は少ない。長期的に、EU拡大はEUの成長を促進するものといえよう。

[最近のEUの実質GDP成長率]
ユーロ圏 イギリス
2001年 1.6% 2.1%
2002年 0.9% 1.6%
2003年 0.4% 2.2%
[寸評]ユーロ圏は、近年低成長であり、8.8%(2003年)と失業率も高い。一方、イギリスは、ユーロ圏より成長率がはるかに高く、失業率も3.1%(2003年)と低い。イギリスには、ユーロ圏のような構造問題がないためである。
   

EUについては、「重要30用語」参照。ユーロ圏とは、EUのなかで、統合通貨ユーロを導入している国々の経済圏のことをいう。イギリスなど3カ国は、ユーロを導入していない。)


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(2)ニューヨーク原油高、日米経済直撃(5/13) **

 中東情勢の緊迫化を背景に、11日のアメリカ市場で原油先物相場の終値が、13年7ヶ月ぶりに、1バレル=40ドルの大台を超えた。原油のほとんどを輸入に頼る日本を始めとして、アメリカなど世界経済に与える影響が懸念される。市場では、今回の上昇局面が、イラク戦争直前に起きたような一時的な高騰ではなく、じりじりと上がり続けており、原油需要を背景にしたものとしており、高値の長期化を予想する声が強い。

 石油元売り大手は、6月から石油製品の卸売価格を1リットル当たり約2.5円引き上げる見通しである。レギュラーガソリンの小売価格も、4月、5月と続けて値上がりした。また、石油化学製品の原材料のナフサも13年ぶりの高値となっており、ナフサから製造される製品の卸売価格も上昇傾向である。しかし、消費市場はデフレ下で値引き競争が続き、小売価格を引き上げにくい状況である。そのため、消費財を生産する企業の収益を圧迫する恐れが大きい。

 そして、年末まで1バレル=40ドルの水準が続けば、消費者の購買力を低下させ、実質GDPを0.3%減少させると見られ、原油高の悪影響への懸念は強まるばかりである。


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(3)世界経済、力強い回復傾向―OECD閣僚理事会閉幕(5/15) ***

 経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会は、14日閉幕し、議長総括では、世界経済が、アメリカとアジアがけん引役となり、力強い回復傾向にあると歓迎した。その上で、米英では利上げが不可避な状況を確認する一方で、日欧には金融緩和が引き続き必要であると指摘した。最近の原油高を懸念材料に上げたが、管理は可能と冷静に受け止めた。

 また、難航するWTOの新多角的貿易交渉(新ラウンド)では、投資ルールなど先進国と途上国が対立していた4つの新分野のうち、貿易円滑化のみを優先して交渉対象とする方向性が示された。


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