11月第2週(11/7〜11/13)印が多いほど頻出(最高3つの*)
(1)財政審、建議素案−財政破綻のシナリオ提示(11/9)
8日明らかになった財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の建議素案は、地方からの反発が強い地方交付税の大幅削減のほか、私大への助成や米軍の駐留経費負担などの防衛関係費の縮減方針を打ち出し、これまで以上に聖域なき歳出削減となっている。素案では、初めて増税による財政再建の必要性に言及したが、増税への国民の理解を得るために、歳出削減も加速させる必要があるためである。
建議素案の最大の特徴は、試算により、あえて国の財政破綻のシナリオを示した点にある。試算によると、現状のまま財政運営をした場合、国の一般会計予算は10年で45%も増え、プライマリ−バランス(基礎的財政収支)の赤字を解消するには、歳出を3分の2にするか、消費税率を21%に引上げる必要がある。試算であえて危機的な財政の姿を示し、財政再建をこれ以上先送りさせない姿勢を明確にしたわけで、建議素案の具体策も、このような厳しい姿勢を反映している。
しかし、これまで以上に、歳出削減に踏み込んだことで、関係省庁や与党の抵抗が強くなるのは必至である。
(プライマリーバランスについては、「重要30用語」参照)
(2)金融機関の決済預金導入、96%が実施か検討(11/11) ***
金融庁は、来年4月のペイオフの全面凍結解除後も全額保護対象となる「決済用預金」の各金融機関の導入・準備状況をまとめた。調査対象617金融機関のうち、の96.4%となる595金融機関が、導入を実施または検討していることが分かった。48機関が、既に実施している。決済用預金は、次の三条件を満たすことを条件に、ペイオフ解禁後も特例として全額保護を続ける。
@ 利子がつかない。
A 決済サービスを提供する。
B いつでも出金(要求払い)に応じる。
(3)日・比FTA農業分野も大筋決着(11/13) **
日本とフィリピンの自由貿易協定(FTA)交渉は、焦点となっていたフィリピン産の農水産品の市場開放問題について大筋で決着した。最大の懸案であった農業分野が山を越えたことで、11月末にも、首脳間でFTA締結について基本合意する可能性が高まった。FTA締結が決まれば、日本にとりシンガポール、メキシコに次ぎ、3カ国目となる。
フィリピン側は、砂糖、バナナ、鶏肉、マグロなどの農水産品で日本の市場開放を要求したが、早期締結を唱えるアロヨ大統領が柔軟姿勢に転じた。フィリピンが求めていた砂糖の関税撤廃については4年後をメドに再協議するほか、鶏肉は関税を段階的に引下げる方向となった。完全撤廃を求めていたパイナップルやバナナも、日本が提示した低関税枠の設定など妥協案を受け入れる意向を示した。
日本とフィリピンのFTA交渉は、当初懸案であったフィリピン人看護師、介護士の受け入れ問題は、大筋で決着しており、農水産分野の大筋決着で締結に向け大きく前進した。
(4)GDP伸び鈍化(11/13) ***
内閣府によると、7〜9月期の国内総生産(GDP)の実質GDP成長率は、前期比0.1%増、年率換算0.3%増の低い伸びに留まり、景気が踊り場に近いことを示している。個人消費は前期比0.9%増と底堅い動きを示したが、景気回復をリードしてきた輸出や設備投資は息切れしつつある。円高の進行や原油高など、懸念材料は多く、先行きは不透明である。
7〜9月期の実質GDP成長率は、内需が0.3%押し上げる一方で、外需が0.2%押し下げた。外需の寄与度がマイナスとなったのは、8四半期振りである。アメリカは10日に今年4回目の利上げをし、中国も10月末に9年ぶりの利上げをしており、海外景気がある程度スローダウンするのは避けられず、円高も加わり、輸出が復調するかどうかは不透明である。
(1)アメリカ利上げ、マイナス金利脱出(11/12) ***
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、短期金利の指標となるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引上げ、年2%とした。4回連続の利上げで、物価上昇を考慮した実質のマイナス金利を脱した。
FRBが今年6月に約4年ぶりに利上げに踏み切ったのは、デフレの脅威は去ったという自信の一方で、インフレの危険をはらむ異常な金融緩和はいつまでも続けられないとの危機感を強く感じているためである。実際、9月の消費者物価は、変動が大きいエネルギーと食品を除いたコア指数で、前年同月比2%増まで上昇した。
FRBは、景気に中立な金利水準とされる年3〜4%程度まで、利上げ基調の金融政策を続ける方針である。ただ、今後のかじ取りは、個人消費や企業の設備投資に与える影響が大きくなりかねないだけに、一段と難しい手綱さばきが求められる。
(1)温暖化ガス排出権海外から購入―基金に35社出資(11/8) ***
民間企業が集まり、海外から温暖化ガスの排出権を購入する基金が発足する。これは、初めてのことである。トヨタ自動車、ソニー、東京電力、新日本石油、三菱商事、日本鉄鋼連盟、東京ガスなど35社が、国際協力銀行、日本政策投資銀行と協力して、12月1日に日本温暖化ガス削減基金を創設する。基金により、海外から排出権を買い取り、出資企業に配当として還元する。京都議定書の発効により、民間企業も排出枠を割り当てられる公算が強くなり、有力企業が手を結ぶことになった。基金の規模は、1億3,500万ドルの見込みである。基金の運用は、2014年までで、温暖化ガス1千万〜2千万トン程度の排出権を購入できる見通しである。
排出権の買い取り対象としては、企業が中東やアフリカなどで行う風力発電所建設事業や、アジアの炭鉱で発生するメタンガスの回収事業などが有力候補に上がっている。
基金は、このような排出権を得た海外企業から権利を購入する。
京都議定書は、先進国の企業が途上国の省エネ事業に協力して排出量が減った分について、排出権の形で受け取り、排出削減量に加算することを認めている。